水木しげる記念館(境港市本町)がリニューアルオープンした。境港市出身の水木さんの貴重な原画や遺品を展示し、作品の世界観だけでなく、生き方を感じることができる。水木さんの家族の言葉とともに館内を紹介する。
2003年に開館し、約1年間の休館を経て4月20日にリニューアルオープンした。以前は空調などの問題で原画の展示は難しかったが、設備が整えられてできるようになった。

展示は6章立て。第1章の「境港のしげる少年」から始まり、「水木しげると戦争」や「水木しげるの漫画ワールド」などを紹介している。
半年に1回、内容が変わる企画展も見どころだ。10月20日までは、映画にもなった「鬼太郎誕生」をテーマにした原画を並べている。

鬼太郎誕生の物語は掲載媒体を変えてこれまで4パターン描かれている。中でもレアなのが、記念館で展示している貸本「妖奇伝」(1960年)。この本では鬼太郎をひろった男の名前が「秋山」(他のパターンは全て水木)になっている。興行収入27億円の大ヒットを記録した映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」のぬいぐるみやサイン本も飾られている。

リニューアルオープンを心待ちにしていたのは「ゲゲゲの女房」こと水木さんの妻・武良布枝さん(92)。次女悦子さんの付き添いで記念館を巡った。武良さんは「こんな素晴らしい場所が境港にできるなんて思わなかった。夫も天国から喜んでいると思う」と遺影を握りしめた。
館内には水木さんが生前、家族にもほとんど語らなかったという「戦争」に着目したコーナーが新設された。

水木さんが使った義手をはじめ、代表作である「総員玉砕せよ!」を特集している。「戦記物を書くと訳の分からない怒りがこみ上げる。多分、戦死者の霊がそうさせるのでは」という水木さんの言葉も印象深い。
このほか、約50体の妖怪が潜む妖怪洞窟が設けられた。隣の部屋には妖怪画も多数展示。長女の尚子さん(61)は「妖怪を描くことで妖怪をコレクションしていたようだ」と語る。
水木さんは「屁のような人生」との著書も残した。瞬時に消えゆく「屁」のような泡沫(うたかた)のものに価値を見いだした姿が垣間見える。
(林李奈)
住所:境港市本町5
開館時間:午前9時半~午後5時。年中無休
電話:0859(42)2171