短歌 寺井淳選

波止に並ぶいつもと同じ顔ぶれの釣り糸をたれ世は平和なり   隠岐の島 高橋 恭子

  【評】ことさらに「平和なり」と言うことで、かえって天災や戦が想起される現代の世界。歌のしらべが滑らかであるだけに一層つらい。希有で貴重な景を描き、なお皮肉も深い。

やるせなき心を癒やす術もなくただプチプチを鳴らすひととき   雲 南 難波紀久子

  【評】格調高く歌い上げようかという上句に対して、下句の「プチプチ」という語感 のかわいらしいギャップが大きく、私の心中を思いやりながらも楽しい印象...