山陰中央新報社とTSKさんいん中央テレビが共通テーマを取材し、新聞紙面とニュース番組の両面で核心に迫る「カケル×サンイン」。今回はJR伯備・山陰線を経由し、岡山ー出雲市駅間を走る特急やくもを取り上げる。4月に新型車両273系がデビューし、42年間活躍した381系電車が定期運用を終えた。両形式とも、カーブでの高速走行を実現するため開発した「振り子装置」を採用している。ただ、システムは異なり、273系は新技術を駆使し大きく進化。最適なタイミングと角度で車体を傾け、不快な揺れを改善している。
(政経部・石倉俊直)
 

381系は「自然式」


 振り子車両は、カーブに進入する際に車体を内側に傾けて走る。カーブでは外側に向かって引っ張る遠心力が発生してスピードが落ちるため、速く走るには体を内側に傾けて遠心力を減らす必要がある。リレー競走やバイクの運転をイメージすると想像しやすいだろう。この原理を鉄道に応用したのが振り子式車両だ。

 381系は「自然振り子式」を採用した(下記イラスト参照)。鍵を握るのは振り子梁(ばり)とコロを用いた傾斜装置だ。カーブ進入時は、底面が円弧状になっている振り子梁が台車にある円柱状のコロに沿って滑り、傾斜する。クーラーなど機器類も全て床下に集約して低重心化を図り、遠心力で床下機器がカーブの外側に移動する力を利用し、強制的に車体をカーブの内側に傾ける仕組みだ。

 

 381系は1973年に名古屋・大阪と長野を結ぶ特急しなのでデビューし、82年から特急やくもで運行を始め、大幅なスピードアップを実現した。

 特に中国山地を縫うように走る伯備線の江尾駅(鳥取県江府町)と新見駅(岡山県新見市)間は、在来線では急な部類と位置付けられる半径300メートルのカーブで、従来車両より15キロ速い時速80キロでの走行を実現した。

 一方、乗り心地の面では課題もあった。遠心力に任せて車体を傾けるため、カーブに入ると車体が急に傾く「振り遅れ」が発生し、不快な横揺れで酔う乗客が後を絶たなかった。

 

「制御付」で快適性向上


 国鉄が分割民営化された1987年以降、JR各社はスピードアップを目指し「制御付振り子車両」を相次いで投入した。

 走る路線の...