両翼91メートルの島根県立浜山公園野球場で夏の甲子園出場を懸けて戦う高校球児=7月19日、出雲市大社町北荒木
両翼91メートルの島根県立浜山公園野球場で夏の甲子園出場を懸けて戦う高校球児=7月19日、出雲市大社町北荒木

 山陰両県内にようやく「全国クラス」の野球場が誕生する。島根県が県立浜山公園野球場(出雲市大社町北荒木)の外野を両翼98メートル、中堅122メートルに改修する計画で、内野スタンドの観客席設置を含めて2024年秋に着工し、26年3月の完成を目指す。公認野球規則で望ましいとされる広さを超え、野球関係者は全国で勝負するための野手の能力や技術、連係の精度向上につながると期待する。

 かねてからの要望に加え、30年に県内で開く「島根かみあり国スポ」の硬式野球会場になったことから改修を決めた。

 外野スタンドを縮小して拡張分を確保し、フェンスの高さは40センチ高くして約3メートルにする。内野スタンドは芝を取りやめて観客席を設ける。収容人数約1万2千人は変わらない。改修費は概算で約5億円を見込み、補助率5割の国の社会資本整備交付金を活用する。工事に伴い、25年度中は使用できない。

外野が拡張され、内野スタンドには観客席が設置される島根県立浜山公園野球場=出雲市大社町北荒木


 公認野球規則によると、両翼97・534メートル、中堅121・918メートル以上が望ましいとされる。全国に比べると、島根、鳥取両県の球場の狭さが際立つ。

 例えば、春夏通じて甲子園優勝がない計12県の今夏の地方大会開催球場で比較すると、公認野球規則の両翼、中堅の長さを満たした球場がないのは島根、鳥取だけ。山形や新潟は5球場全てが規格を満たし、秋田は両翼100メートルの球場が三つある。島根大会の浜山球場や、鳥取大会のヤマタスポーツパーク野球場(両翼92メートル、中堅120メートル)と差がある。

 

 甲子園出場経験がある指導者は、球場の広さで守備範囲や肩の強さといった外野手の能力や経験値に差が出る可能性があると指摘。左中間と右中間が深い甲子園で勝つためにも広さは重要だと強調する。

 春夏合わせて計10度、甲子園の土を踏んだ開星高(松江市)の野々村直通監督は「甲子園や中国大会の球場は島根の球場より広く、改修で広くなると、選手は物おじしなくなる。低反発バットで打球が飛ばなくなっていることもあり、守備は難しくなるが、大切にもなる」と期待した。

外野が拡張され、内野スタンドには観戦席が設置される島根県立浜山公園野球場=出雲市大社町北荒木


 改修は、競技力向上に加え、プロ野球公式戦の誘致に向け、野球関係者らが4万4344人の署名を集めて県に求めた経緯もある。

 日本野球機構のデータによると、山陰両県のプロ野球公式戦の開催実績は島根27試合、鳥取36試合。浜山球場は1977~83年にパ・リーグ7試合があり、初試合となった77年5月の阪急ー近鉄戦は梨田昌孝さん(浜田市出身)が出場した。両県では、米子市出身の九里亜蓮投手(広島)が凱旋登板した2014年のどらドラパーク米子市民球場での広島ー阪神戦が最後になっている。

 大田スポーツ少年団(大田市)の清水祐貴監督は「今はプロを観るには県外に行くしかない。社会人野球も含め、幼少期から高いレベルを見せると目標が変わってくる。ぜひプロを呼べるようになってほしい」と願った。(曽田元気)

島根県立浜山公園野球場

 1974年に完成し、両翼91メートル、中堅120メートル。全国高校野球選手権島根大会の主会場で、88年夏には後にプロ野球で活躍する谷繁元信さんが江の川高校(現・石見智翠館高校)時代に3打席連続本塁打を放った。島根県は2020年に17億円をかけ、バックネット裏の屋根のほか、選手用トイレや更衣室、シャワー室などを設置した。