JAしまね(松江市殿町)は26日、コメを出荷した農家に支払う2024年産米の概算金(コシヒカリ1等米、60キロ当たり)を23年産より4600円高い1万6800円に引き上げると発表した。増額は3年連続で、15年の概算金制度導入以降では最高値。生産資材高騰が農家の経営を圧迫しているのに加え、国内の消費拡大に伴う全国的な価格動向を踏まえて決めた。

 他の品種の概算金(1等米、60キロ当たり)は、きぬむすめが1万6600円、つや姫が1万7400円で共に4400円増。ハナエチゼンは2700円増の1万4千円、つきあかりは4600円増の1万5900円とした。

 概算金は集荷時点で農家に支払う。作柄や相場動向により、年末の追加金と翌年末の最終精算金で上乗せする。

 生産者の減少や猛暑の影響で収穫量が低下。一方、新型コロナウイルス禍明けの外食やインバウンド(訪日客)需要の拡大で需給が引き締まっている。農林水産省が公表した6月末の民間在庫量は、前年同月より41万トン少ない156万トン。来年6月末は4万トン減の152万トンを見込む。

 近年の肥料や農機具、エネルギー価格の高騰で農家の生産コストは膨らんでおり、需給状況を勘案しながら引き上げ幅を決めた。

 23年産の計約3万2400トンについては、卸業者との間で既に売買契約が完了した。24年産は、農家から集荷予定の全量の約8割に当たる2万8千トン分の買い取りを卸業者に打診し、需要増を背景に好反応を得ているという。

 同JAの坂本満常務理事は「(概算金額は)生産と消費の双方の動向を考慮して決めた。追加金が出せるよう販売努力をしていく」と話した。

 江津市内の14ヘクタールで水稲をつくる農業法人「MOG―MOG(モグ-モグ)」はこの5年で生産コストが少なくとも2割弱増えた。

 藤井拓次郎代表は概算金の引き上げについて「辛抱が続いていた。生産意欲が上がる」と歓迎しつつ、「(値上がりが)消費者の理解を得られるかが、今後、農家が生産を続けられるかどうかを左右する」と話した。(今井菜月)