ユニークな建築物として、また年間300万人の集客力を誇る観光施設としても成功した、滋賀県近江八幡市のラコリーナ近江八幡を訪ねた際、説明抜きで、その醸し出す景観の魅力に脱帽した。
2015年に老舗和菓子会社の旗艦店として完成。琵琶湖の東岸・近江地域の観光拠点になっている。草屋根で覆われた建物が特徴で、中庭に広がる水田には稲が育ち、焼きたてのバウムクーヘンの香りが土壁の路地まで広がっていた。
設計者は建築史家の藤森照信氏。「建物の背景には信仰を集める鶴翼山があり、その景観を壊さないことを第一に心掛けて草屋根にした」という。確かに田園風景と山の緑に溶け込む建築美は秀逸だ。
日本の歴史的建造物は宗教とのつながりが強いが、20世紀のモダニズム建築は「神に代わって科学技術が据えられた」と藤森氏は考えている。「有機的な自然は捉えることができない。邪魔な木があったら切り、山があったら削るという発想」だ。
一方、ヨーロッパには「人間の住む環境は便利なだけでなく、古くからの歴史や自然が残されていないと心が落ち着かない」という認識があるという。根底に流れるのは自然や景観への深い配慮だ。かつて「湖都」と呼ばれた松江市内には高層建築が次々と姿を現している。適法だから何でも受け入れるという無機質な思想で、「松江らしさ」を未来に残すことはできるのだろうか。(裕)













