秋田市内の自宅で東京本社の業務にあたる明治安田生命保険の近江谷悠貴さん=5月(同社提供)
秋田市内の自宅で東京本社の業務にあたる明治安田生命保険の近江谷悠貴さん=5月(同社提供)
東京本社にいる社員とオンラインで打ち合わせをするSOMPOひまわり生命保険の女性社員(中央)=5月、東京都新宿区(同社提供)
東京本社にいる社員とオンラインで打ち合わせをするSOMPOひまわり生命保険の女性社員(中央)=5月、東京都新宿区(同社提供)
秋田市内の自宅で東京本社の業務にあたる明治安田生命保険の近江谷悠貴さん=5月(同社提供)
東京本社にいる社員とオンラインで打ち合わせをするSOMPOひまわり生命保険の女性社員(中央)=5月、東京都新宿区(同社提供)

 全国転勤がない「地域限定型」で働く社員が、テレワークを活用し地方にいながら本社勤務できる動きが保険業界を中心に広がっている。子育てや介護で転勤が難しい社員のキャリアアップにつなげるのが狙いで、新型コロナウイルスによる在宅勤務の普及が後押しした格好。保険業界は、地域限定で働く社員の大半が女性で、担当者は「場所にとらわれない働き方で社員の仕事もプライベートも充実させたい」と話す。

 明治安田生命保険(東京)は今春、地方支社などに勤務する社員が転居しなくても東京本社の部署で勤務できる仕組みを導入した。テレワークを活用し、自宅や支社、営業所で個人や法人保険事務などの本社業務にあたる。今はこの制度を使って17人の社員が働いており、2022年度以降はさらに人数を増やして本格実施したい考えだ。

 秋田市在住の近江谷悠貴さん(34)もその一人。3月まで秋田支社で営業事務を担当。現在は本社・ブランド戦略部に所属し、広告業務や社内広報の作成に携わる。

 入社当時から本社業務に興味はあったが、家族の介護が重なり転勤は難しかった。支社の仕事は充実していたものの、営業職員のサポートや電話・来客対応といった内容に長く変化はない。新しい分野にチャレンジしたいと思っていたところ、新制度を知り応募した。

 最初は不安だったというが「周囲の助けもあって問題なく働けている」と近江谷さん。「いつかは本社で実際に働いてみたい」と意欲をみせる。

 似たような取り組みは大同生命保険(大阪、東京)やアフラック生命保険(東京)でも。全国に支社がある企業では、転勤できるかどうかで職種を分けて採用するところもある。個別事情に合った働き方を選んで無理なく勤務してもらうことが目的だが、転勤がない地域限定型社員の大半は女性というのが実態だ。

 明治安田生命の場合、「総合職・地域型」で働く社員約5800人のうち99%が女性。同じ勤務地では業務内容も限られ、幅広いキャリア形成が難しいことが課題だった。育児や介護が落ち着いてから全国転勤を希望する女性社員もいるというが「もっと若いうちから経験できる機会を提供したい」と担当者は話す。

 SOMPOひまわり生命保険(東京)も、今春から「どこでも本社勤務制度」を開始。テレワーク自体は17年から始めていたが、インフラ整備やペーパーレス化が進まず一部の社員しか活用できなかった。

 しかし、コロナ下で環境が整備され、多くの社員がテレワークで働けるように。転勤が難しい女性社員から支社業務以外の仕事を経験したいという要望があり、制度を導入した。現在は女性社員11人が本社11部署で勤務する。

 中央大大学院の佐藤博樹教授は「制度の定着には安定したポストづくりが大切だ。この制度をいかに持続させていくか考えることも企業には求められる」と話した。