経済産業省が、新たなエネルギー基本計画の素案を有識者会議に提出した。菅義偉首相が宣言した「2050年に温室効果ガスの排出実質ゼロ」や、30年度の排出量を13年度比で46%削減するとの目標の達成に向け、新たなエネルギー政策の道筋を示すものだ。

 だが、二酸化炭素排出量が多い石炭火力や、さまざまな問題を抱える原子力への依存を続ける姿勢は大きく変わらない。脱炭素の実現に不可欠な社会や経済の大転換を促すきっかけとはなり得ず、今後、根本的な見直しが必要だ。

 気候危機の深刻化を背景に日本政府は昨年、50年排出ゼロ目標を打ち出し、そこへ向け「30年度の46%削減と50%の高みを目指す」ことを国際的に公約した。その実現がこれからのエネルギー政策で最大の課題だ。

 電力部門について素案は、現行計画では今より増えるとしていた30年度の電力供給を、省エネなどによって約10%削減することを見込む。その上で現行では22~24%だった水力を含む再生可能エネルギーを36~38%に拡大。その一方で石炭は26%から19%に削減する。

 野心的にも見えるが、再エネ目標はドイツの65%、米カリフォルニア州の60%などに比べれば大きく見劣りする。

 米国が35年の電力脱炭素化を打ち出し、英国、フランス、カナダ、ドイツ、イタリアなどが石炭火力の全廃を打ち出す中、「低減する」としつつも「安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源」だとして今後も石炭火力を活用する姿勢を示している。

 主要国に比べ、日本は電力部門の温暖化対策の遅れが指摘されていることからしても、野心の度合いは低く、脱炭素社会形成のきっかけとなるとは言い難い。

 東京電力福島第1原発事故から10年を経ても再稼働が思うように進まず、高コスト化が目立つ原子力の19年度の電源比率は6%にとどまる。にもかかわらず新計画は30年度に20~22%という目標を見直さず「長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」との位置付けも変えなかった。

 原子力が直面する現実を直視すれば、見直しは不可避のはずだ。「原発が稼働できなかったから46%削減ができなかった」との言い訳に使われる懸念もある。

 50年の脱炭素目標を国として掲げた以上、新計画を、求められる社会と経済の根本的な変革への「跳躍台」として、社会に明確なシグナルを出すべきだった。従来の延長線上にあるとしか言えない今回の素案では全く不十分だ。

 役人が選んだメンバーによる会議の場で、ともすれば形式的な議論を進めながら、役所がまとめた長大な案をそこに示すという旧態依然とした手法が続いたことも大きな問題だ。

 素案は「既存の発想にとどまらない大胆な政策的措置、方向性を示さなければ30年の新たな目標達成はおぼつかない」と記述。「審議会や有識者会合等を通じた政策立案のプロセスは、最大限オープンにし、透明性を高めていく」としている。

 そうであるなら、素案の内容はもちろん、議論の仕方も根本的な見直しが必要だ。国の未来を左右する重要な政策を、役所と一部の利害関係者で決めるようなことは許されない。