母親の「里帰り出産」に幼い子どもが同行し、保育所を一定期間欠席した場合の対応が山陰両県12市で分かれている。松江、出雲、鳥取各市は新規の入所希望者が待っているなどとして原則、退所しなければならない。その他の9市は規定を設けておらず、退所にはならない。
「もう少し何とかならないでしょうか」
昨年、松江市内の保育所を通じて、市保育所幼稚園課に里帰り出産を控える母親の声が届いた。
同様の問い合わせは毎年出ているという。市は従来、自己都合で長期欠席する場合の許容期間を2カ月としてきたが、里帰り先での産前産後の健診や出産後のケアに一定期間が必要と判断し、2023年度の途中から里帰り出産に限って3カ月に引き延ばした。
保育所幼稚園課の花形千穂課長は「産前、産後の用意を考えると2カ月は短いという声も理解できる」とする。一方で「新たに預けたくて希望を出している保護者からは『なぜ通っていない子どもがいるのに枠が空かないのか』という声が寄せられる」と説明する。同市の場合、入所を申し込んだのに施設に入れない子どもは今月1日時点で112人に上る。
子どもを預ける保護者からすると、いったん退所すれば、里帰り出産後に戻ってきたとき、通い慣れた施設に再入所できる保証はない。こうした心理が里帰り中も保育料を払い続け、退所を選ばない理由の一つとみられる。
出雲市も里帰り出産の場合は「最終登園日から90日後を含む月末」まで欠席が可能だ。園山博之保育幼稚園課長は「待機児童の解消とともに実態に即した適切な保育を進めるため」と説明する。
鳥取市は、里帰り出産や病気など理由にかかわらず「1カ月以上」は原則、退所とする。幼児保育課の担当者は「一定期間以上、一度も預けないということであれば、何かしらの方法で保育が可能だろうと判断できる」と話す。
残る9市は明確な規定を設けていない。里帰り先で別の保育所へ「二重入園」はできないが、一時的な預かりは有料で利用可能だ。
9市の担当者は実際に何カ月も里帰りする人は多くないとし「相当長引くようであれば相談が必要だが、家庭状況や待機児童の状況も含めてケース・バイ・ケースで考える」と声をそろえた。(白築昂)