夜間に子どもを受け入れる認可外保育施設「バンボハウス」(松江市乃木福富町)が12月末で閉園する。経済的理由などで深夜に働くシングルマザーらが活用してきたが、コロナ禍以降は利用が減少。赤字経営になり、継続の道を探ったが断念した。預けるのは主に経済的に苦しいひとり親。夜間の受け皿がなくなれば、働く機会が制限され、さらに収入が減る「負の連鎖」が生まれかねない。
子どもの遊び相手をしながら赤松利都子施設長(42)が「もう続けられない」と胸中を明かした。
施設は2006年に開園。市内で複数回移転し、19年に現在地に移った。受け入れ時間は午後5時半から翌日午前3時までで、延長にも対応している。8月は月決め契約で幼児~小学生の15人が通った。親の中心は20~30代で、同市内や出雲市内の繁華街で働くシングルマザーが多い。
19年は多い月で26人の月決めがあったほか、短時間の一時保育も月によっては40人以上あり、経営は安定していた。しかし、コロナ禍で月決めが激減。今年に入っても月決めは12~17人、一時保育は11~26人にとどまる。借り入れたコロナ融資の返済が夏に始まり、スタッフ計5人の給与も含めて施設運営にかかる支出は月100万円近くに上る。
赤松施設長は「必要としてくれている人がいるのは十分理解しているが、月に数十万円の赤字が走っていては」と唇をかむ。9月に利用者に閉園を伝えたところ「他に預ける所がどこかありますか」と不安の声が寄せられたという。
松江、出雲両市などでラウンジを経営し、1歳の子を預ける女性(41)は「閉園後はどうすればいいのか。子どもを預けられなければ働いたり、子どもを持つのを諦めたりしてしまう」と先行きを案じる。
松江市こども子育て部によると、市内で夜間受け入れを行う保育園は他にもう一つあるが、午前0時で終了する。花形千穂保育所幼稚園課長は夜間保育施設のニーズは一定数あるとし「来年以降、次に担ってもらえるところの検討を進めている」と話す。
市によると市内の母子・父子家庭は20年度で1031世帯ある。赤松施設長は「夜に預ける場所がなければ働きに出られず、さらに収入が減る。何とか事業を続けてくれる事業者が出てほしい」と願った。
(白築昂)