カッターナイフ一本で幾重にも層が重なった繊細で美しい作品を生み出す、松江市出身の立体切り絵作家・SouMaさんの作品展「SouMaの世界展」(山陰中央新報社主催)が7日、松江市殿町のカラコロ工房で開幕する。素材の良さを生かし創作を続けるSouMaさんに、作品に込めた思いを語ってもらった。
(増田枝里子)
小学校入学前から白い紙とカッターナイフで創作して遊んだ。お絵描きは得意ではなく、ペンの代わりにカッターで切ることが好きだった。折り紙に切り込みを入れるなど、遊びの延長でしていた創作が「立体切り絵」の始まりだった。
医療関係の仕事に就いてからも趣味で続け、ブログに掲載したり、小さな個展で展示したりするうちに反響が少しずつ広がり、作家としての活動が増えた。創作は自分にとっては食事と同じで自然に手が動く。好き嫌いとかでなく、生活の一部なので、題材を探したり、発想を求めてどこかに行ったりすることもない。
設計図や下絵もなく感性の赴くままに切り進める。失敗や間違いという感覚もない。当初の想定とは違った作品になることもあるが完成したものの方が尊いと思っている。
■独自の手法「はがし切り」
「はがし切り」は独自の手法で、紙の厚みを薄くはがして彫刻のように削り、濃淡を生み出す。刃を刺す深さを変えれば8段階のコントラストを作れる。新しい刃より摩耗した刃の方が振動が伝わりやすく、はがし切りに最適なので古い刃も捨てずに取っている。


「私が主役」ではなく「素材が主役」。紙質から着想したり、空気の乾燥具合に合わせて制作したり。「今、ここにあるもの」全ての素材に合わせて作る。ふと浮かんだ景色、匂い、音などや、日々変化する感情に流されて作る楽しさがある。余った紙に残ったシルエットにも偶然の美しさがあり、別の作品に生かすこともある。あちこちにヒントが散らばり、アイデアが枯渇することがない。
■友人の写真基にした作品 初展示
今回初めて展示する「太陽な女性(ひと)」(2024年)は、はがし切りを多用した人物作品。子どもの頃から知っていて、活動の初めの一歩を後押ししてくれた友人の写真を基に制作した。松江に戻ってくるのを楽しみにしてくれて、見てほしかったが亡くなった。会場で一緒の空間にいると思えることを楽しみにしている。
私の作品は制作過程を想像してもらいやすく、興味を持ってもらえるのではないかと思う。自然豊かで、人との触れ合いも多い地元・松江での展覧会を通し、感謝の気持ちを伝えたい。