無類の酒好き。好き過ぎてクラフトビールの世界に飛び込んだ。高津川リバービア(益田市高津2丁目)の社長・上床絵理(43)=福岡市出身=は、ゆかりのない益田市を開業の地に選び、自社製ビールの製造・販売を始めた。「執念」の文字を心に刻み、商才を発揮する。(interviewer・藤本ちあき)
#(中)益田の自然に魅せられ、国家公務員から転身
#(下)目標は「20年後もこの地で」
「やらされてやっていない」
12月中旬の土曜日の夜、高津柿本神社(益田市高津町)の参道沿いに構えた酒場で、楽しげな笑い声が響いた。上床は店内で自らが手塩にかけたビールに囲まれ、いつもの笑顔を浮かべる。ビールに溶け込ませる地元特産品のシャインマスカットやユズ、クロモジの風味を最大限に引き立たせるため、吟味に吟味を重ねて造った品々だ。酒場の近くに設けた醸造所で、年約15トンを製造する。
2020年に益田市にIターンし高津川リバービアを創業した後、23年に自社製のクラフトビールとつまみを提供する「クラフト酒場高角」を開いた。主に日中に営業し、夜も営業する土曜日は店で常連客と談笑する。

くつろぐ姿に心身の余裕が感じられるが、仕事は多忙を極める。社員4人の高津川リバービアの経営者として、販路開拓や原料調達、取り扱い店舗との調整に加え、ビール瓶のラベルも自分で1枚ずつ貼る。出店のため月1回ペースで関東や大阪、広島などで開かれるイベントに出向く。
事業は全国的に注目されるようになり、各地からセミナー講師の依頼も舞い込む。過去に会計検査院で勤めた経験を生かし、ITセキュリティー監査に携わる別会社の業務もある。
2~3カ月間、休日がないことがざらにある。働き過ぎに映るが、...