島根県は2023年12月、ベトナム航空及びエムエスツーリストとの間で国際定期便の就航実現に向けた覚書・連携協定を締結しました。今年3月には、この覚書等に基づくチャーター第2便が運航予定。県は、今後こうしたチャーターの実績を積み上げていくことを通じ、定期便の就航に繋げていきたいとしていきます。

労働力不足の解消へ
地域を駆け回る
架け橋としての日々

岡本進太郎さん Shintaro Okamoto 株式会社 ヒューマンサポートジャパン


「島根県とベトナムをつなぐ架け橋になりたい」―。県内企業とベトナム人労働者とのマッチングを行うヒューマンサポートジャパン(江津市都野津町)の岡本進太郎社長(41)は、人口減少や労働力不足が深刻な地域社会を支えようと奮闘しています。  
ベトナム出身で首都ハノイの農業大学校を卒業し、2007年に現地の日本大手自動車メーカー子会社に入社。関東にある親会社への出向で、08年に来日しました。「当時は日本で働くベトナム人が少なく、企業側の対応も良いとは言えませんでした。さらにベトナム人はあまり教育されておらず、日本での生活に苦しむことも多い状況でした」

ベトナム人労働者を県内企業に紹介し、地域経済を支える岡本進太郎社長  

何とかしたいと、13年にベトナムに日本語学校を設立。日本に留学する学生や、日本で暮らすベトナム人の生活や仕事をボランティアで支援する中でニーズが増え、17年に関東で仲間と今の会社を立ち上げました。
東京で島根県が開いた農業イベントへの参加がきっかけで島根に興味を持ち、18年に江津市に支社を開き、翌年には松江支社も設置。23年7月には東京都町田市にあった本社を江津に移しました。ゆったりとした島根暮らしを気に入って妻と子どもを呼び寄せ、今では両市を行き来しながら業務に励んでいます。  
「島根が人口減少に悩んでいることを知り、ベトナム人労働者で応援したいと思いました。主に専門知識と技術を持った高度人材を、製造業を中心に紹介し、職場や生活の定着も一貫してサポートしています。受け入れ実績が年々増える中で、ベトナム人が気軽に集まる場所になればと、松江に本格的なベトナム料理店を開きました。県内でベトナム人のコミュニティが増えています。彼らが幸せに暮らしている姿を見るのが何よりの原動力です」

県内の外国人住民数でベトナム人はブラジル人に次いで2番目に多く、県民にとっても身近な国となっています。24年5月には、出雲縁結び空港とベトナムを結ぶチャーター便運航が実現しました。「日本とは違ってベトナムは若者の割合が多く、今後も伸びしろがあります。両国の交流発展に向け、チャーター便は第一歩。定期便の開設を期待しながら、架け橋としての役割を果たしていきたいです」
 

多様性で企業力アップ
社業の発展支えるベトナム人労働者

原 真士さん Shinji Hara 山陰設備工業株式会社

建物に欠かせない空気の通り道「ダクト」を設計から施工まで手掛ける山陰設備工業(出雲市稲岡町)。人口減少や労働者不足が地域課題となる中、原真士社長(44)は「多様性が企業を強くする」と、ベトナム人の採用に活路を見出しています。  

東京の大手空調設備会社で働き、家業を継ぐためにUターンし、2015年に3代目社長に就任しました。ベトナム人の採用を始めたのは17年です。「帰ってきた当時は慢性的な人手不足で、募集しても人が来ない状況でした。実際に海外人材を採用している経営者の話やセミナーでの成功事例を聞き、会社発展には多種多様な⼈材の登⽤が必要だと感じ、チャレンジしてみました。」

ベトナム人従業員と作業工程を確認する原真士社長(右から2人目) 

17年に2人を迎えてからこれまで12人を採用し、現在はベトナム人8人、ブラジル人1人が在籍しています。外国人従業員は全体の3割強を占め、社業に欠かせない存在です。
 
「家業を継いでから賃上げや長時間労働の是正、働きやすい職場整備などに取り組む中、外国人労働者にも気持ちよく働いてもらえるようサポートをしてきました。言葉の壁を取り除くため、日本語教育に加え、作業マニュアルをベトナム語に翻訳しています。社員寮は家具家電を完備し、来日してすぐは1週間分の食料をまとめて支給しています。真面目で仕事熱心な彼らのおかげもあって、商圏が全国に広がり、売上は5倍に、社員数は3倍強にそれぞれ増えました。当初は先代や年配従業員から反発がありましたが、今では貴重な戦力として温かく迎え入れてくれています」  

従業員が帰国後も働けるようにと、24年11月にはベトナムに現地法人を設立。25年5月には現地で15人を雇用して新工場の稼働を予定しています。  

「意欲をもって日本に来て働いたのに、帰国後に学んだことを生かせない状況を解消したいと考えました。会社として初めての海外進出で、売上アップに加え、国内外での人材供給が可能となり、さらなる経営の安定化につながります。大きな期待を寄せる将来的な出雲ーベトナム間の定期便運航に向けては、山陰両県でベトナム人材を活用する企業が増えることも重要です。新たな挑戦を成功させることで定期便運航に弾みをつけたいですし、今後も多様な人材が活躍できる環境を整え、地域社会全体の活力を高めていきたいですね」

●ベトナム航空で行く ベトナムツアー4泊5日
出発:2025年3月21日(金)
帰着:2025年3月25日(火)

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