掛け布団が異様に重く、起き上がれない。心電図のモニターの光がまぶしい。首元や手首に腹部。体のあちこちから飛び出した管が輸液バッグにつながれている。

 早川麻里(51)は、肝臓移植手術を受けた2023年のクリスマスの朝から3日間、眠り続けた。東大病院の集中治療室(ICU)で目を覚まし、体の変化に焦った。「とんでもないことが起こっている」。数時間後、肝臓の一部を提供した夫(53)が車いすで現れた。

 頬を緩ませ、言葉を交わし、すぐにはっとした。夫はまだ歩け...