第1章・浅井畷(なわて)(1)

 

 野田山は耳を圧するほどの蝉(せみ)しぐれに包まれていた。頭上をおおう木々に宿る蝉たちが、終わりゆく夏に追われるように懸命に鳴き交わしている。

 前田...