女子フェザー級決勝 フィリピンのネスティー・ペテシオ(手前)と、健闘をたたえ合う入江聖奈=両国国技館
女子フェザー級決勝 フィリピンのネスティー・ペテシオ(手前)と、健闘をたたえ合う入江聖奈=両国国技館
女子フェザー級で優勝し、金メダルを手に笑顔の入江聖奈=両国国技館
女子フェザー級で優勝し、金メダルを手に笑顔の入江聖奈=両国国技館
女子フェザー級決勝 フィリピンのネスティー・ペテシオ(手前)と、健闘をたたえ合う入江聖奈=両国国技館
女子フェザー級で優勝し、金メダルを手に笑顔の入江聖奈=両国国技館

 夢の金メダルをつかんだ。ボクシング女子フェザー級の入江聖奈(20)=日体大、米子西高出=が日本女子初出場で頂点に立った。20歳の若きファイターは、リング上で豊かに感情を表現した。表彰式後は「ほっぺをつねったけど、夢みたい」と目を潤ませた。

 笑顔で入場し、ぺこぺことおじぎをして決勝のリングへ。ボクシングの女子は2012年のロンドン五輪で採用され、日本勢は今回が初出場。決して下がらない入江のパンチが相手を捉えた。

 ボクシング漫画「がんばれ元気」に影響され、小学2年生で競技を始めた。きれいなパンチを決める快感のとりこになり、男子にも気後れせずスパーリングに励んだ。後藤ケ丘中陸上部では800メートルで全国大会に出場するなど脚力もあり、リングでは連戦連勝だった。

 2013年に東京五輪開催が決定し、拳に人生を懸けることを決めた。夢の重みが分かったのは5年前。リオデジャネイロ五輪が行われた夏、ボクシング女子が公開競技として実施された全国高校総体だった。米子西高1年の時、今大会一緒に五輪に出場している2学年上の並木月海(自衛隊)との打ち合いに屈し「人生初の負け」となった。ジムの仲間が勝ち進む中、会場の駐車場の車の中で「メダルも何もなくて、何をしているんだろう。明るく振る舞おうと思ったけど」とむなしさを味わった。歓声が聞こえてくる外に出て、シャドーボクシングをした。

 15歳の時に抱いた悔しさを忘れていないから、東京五輪への思いは人一倍だった。国内予選で一つ勝つたびに相手の涙、つらい表情を見てきた。「私の分まで頑張って」の言葉が胸にずっしりと響く。「多くの夢が託された。日本女子が強いところを見せたい」と快進撃を続けた。

 すがすがしい表情で臨んだ試合後の記者会見では、両親に焼き肉をおねだり。「(部位は)タン一択」と話し報道陣をなごませた。カエルが大好きで、決勝の作戦は「詰め将棋をするトノサマガエル」。丁寧に一手一手詰めて「殿様」になった。

 女子の競技登録者は500人ほどしかいない。好結果を出さなければ注目されないと自らに重圧をかけ、東京の夏に鮮やかな足跡を残した。