2024年10月、キルギス系ロシア人の男(56)がドイツ当局に逮捕された。欧州で最新のデュアルユース機器(軍民両用品)を調達し、ロシアに輸送していたという容疑だった。事件をきっかけに浮かび上がったのは、日本や欧米各国にロシアが張り巡らせた秘密の調達網だ。その網の中には、日本の製品も含まれていた。私たちは、世界のジャーナリストが協力して調査報道をするネットワーク「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)と、プロジェクトに参加した南ドイツ新聞やドイツの公共放送NDR、米ワシントン・ポストなどと共に取材を開始。日本の大企業がロシアの思惑に乗せられていく様を追った。(共同通信=武田惇志、角田隆一)

 ▽疑惑の男

 男は物流会社の社長として、2021~2024年、欧州各国から最新機器を調達し、ロシア側に輸送、売却したとして、外国貿易法違反罪で起訴された。ドイツ当局は男の電話を盗聴、メールも監視し、活動の詳細を突き止めたという。捜査にはドイツの諜報機関も協力した。

 起訴状によると、逮捕された男が調達していたのはノルウェ...