女子フェザー級決勝の3回、フィリピン選手(右)を攻める入江聖奈。判定で破りボクシング日本女子で初の金メダルを獲得した=両国国技館
女子フェザー級決勝の3回、フィリピン選手(右)を攻める入江聖奈。判定で破りボクシング日本女子で初の金メダルを獲得した=両国国技館

 運命を決する最後のゴングが鳴った。女子フェザー級決勝の3ラウンド目。両国国技館に響く関係者の大きな拍手に包まれ、入江聖奈がネスティー・ペテシオに連打を浴びせた。セコンドの指示もよく覚えていない。「記憶があいまいだが、行くしかない、ということをずっと考えていた」。頂点へ、攻めた。

 2ラウンドを終えてジャッジの採点は1人が入江を支持、残り4人は同点だった。ラスト3分を制すれば、日本女子初の金メダルをつかめる。最も得意な左ジャブでリズムをつくり、右を放つ。残り1分を切ってたまらず背中を向けた相手を追いかけた。タフなファイターを闘争心でも上回った。

 鳥取県初の五輪金メダリスト誕生だ。米子市のジム「シュガーナックル」でボクシングを始めたのは小学2年生。ジムの会長で日本連盟の伊田武志女子強化委員長から「最後はファイティングスピリット。そして勝たないと駄目だ」の精神をたたき込まれた。

 合宿ではリングに寝袋を敷いて泊まり込み、五輪の夢を見た。2019年12月、五輪予選の代表を決める試合では右拳に亀裂骨折を負っていたが「会長、人生を懸けてきます」と笑みを浮かべ構わず強打を振るった。

 覚悟は五輪でも同じだった。19年の世界選手権女王、ペテシオの圧力に屈せず、最終ラウンドはジャッジ全員が入江を支持。「ブルーコーナー」のコールとともに跳びはね、涙と笑顔が入り交じった表情になった。