小泉八雲の著作の中で間違いなく重要な位置を占めるのは、古典的な伝承・伝説の内容を書き手が創造的に語り直すいわゆる再話の文学である。その中でも『怪談』は一番に名前が挙がるだろう。

 再話物語の元になる日本の怪異譚(かいいたん)や説話集を読んで八雲に語って聞かせるという、作品成立に欠かせない重要な役割を果たしたのが妻セツである。...