「見ててごらん。もうじきしたら『コメがない』って騒ぎ始めるから」。島根県の検討会委員として雲南市加茂町の水田を視察した昨年7月末、農業政策に詳しいベテラン委員から声をかけられた。
ぴんとこなかったが、1カ月後、スーパーの商品棚からコメが消えたのは周知の通り。前年夏の猛暑の影響やインバウンド(訪日客)の増加が根拠だったのか。その後に気象庁が発表した南海トラフ地震臨時情報に伴う買いだめも「令和の米騒動」に拍車をかけた。
あの“予言”から9カ月。さすがに商品棚が空っぽになるような光景はないものの、代わりに目が飛び出るほどの値札に驚かされる。農林水産省が発表した7~13日に全国のスーパーで販売されたコメ5キロ当たりの平均価格は前年同期比2倍超の4217円で過去最高に。「高根の花」ならぬ“高値のコメ”はいつまで続くのか。
わが家は兼業で稲作を営む知人から購入しており、そこまで割高感はない。生産者と直接つながりを持つことも自衛策になるだろう。
冒頭の視察では肥料や燃料、人件費などの上昇で厳しい経営が続く生産者の嘆きを聞いた。現在のコメは消費者にとっては高いが、生産者の苦労を思えば、これまでが安過ぎたのではと思う。高値が生産者の安定営農につながるなら、まだ納得できる。だが高騰を利用してもうけようとする投機筋に流れては、高いコメを買うかいがない。(健)