先祖の魂がこの世に帰るとされる盆を控え、山陰両県の墓地では墓掃除代行業者が精を出す。新型コロナウイルス感染拡大で県外からの帰省がままならない中、昨夏に続き今夏も依頼が殺到。連日の猛暑で過酷な作業に「家族の思いをくみ取り、よい盆を迎えてほしい」と汗を拭う。
5日午後、松江市内の寺院墓地では気温35度を超える猛暑の中、墓の清掃・管理を担うサポートサービス花(松江市浜佐田町)の山本佳樹さん(59)が作業に励んだ。
山本さんの自営業で、島根県東部などで約200基の管理を1人で請け負う。顧客は大半が県外在住者だが、年齢を重ね、墓への通いが難しくなった県内在住の高齢者からも「県外の子に迷惑をかけられないから」と依頼が舞い込む。原則、年間契約で、盆のほか春と秋の彼岸、年末に掃除や献花を担う。
2007年の開業以来、人口流出と高齢化に伴い、顧客を獲得。コロナ禍に入ってからは引き合いが急増した。盆前の新規契約は毎夏数件だったが、昨年は15件、今年も8件の契約を結んだ。今なお問い合わせがあるが、対応しきれず断らざるを得ない状況という。
盆に向けては春先から準備する。各墓で一度大規模清掃を行い、直前にもう一度仕上げをし、8月10~13の4日間で一気に約200基に献花する。
今夏は記録的な猛暑が続くが、山本さんは「はうようにしながら墓に通う高齢者の方もいる。それだけ大切な場で仕事していることを、しんどい時に思い出している」と作業を続けた。
山陰両県内では代行業者のほか、シルバー人材センターも墓掃除に対応。このうち鳥取市シルバー人材センターは春先から予約が埋まり、7月からは受注を断っている状態だという。
(多賀芳文)