ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった大阪大特任教授の坂口志文さんが、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見した当時、その存在に懐疑的な目を向ける研究者は多かったという。評価されない不遇の時代を過ごしながら、諦めることなく研究に打ち込み、メカニズムの解明に至った。揺るぎない信念で成し遂げた偉業に、心から敬意を表したい。
ご本人に言わせると、研究のつらい時期を乗り越えられたのは「鈍感で楽観的な性格だから」。幸運、鈍重、根気を意味する「運鈍根」を好きな言葉に挙げる。傑人にはそういう一面があるのだろうか。含蓄に富んだ言葉を知り、この人がふと頭に浮かんだ。
米大リーグのポストシーズンを戦うドジャースの新守護神・佐々木朗希投手である。鳴り物入りで入団した1年目の早々に右肩痛で戦線離脱。自分を信じて根気強く調整を続け、土壇場での復帰はブルペン崩壊のチーム事情が重なり運も味方した。
未経験の救援登板で重圧がかかる場面も臆せず投げ込み、敵地ファンの強烈なヤジを「英語が分からないので気にしない」と言ってのける。コメント通り受け取るなら、鈍感極まりない。リハビリ中も厳しい評価や批判は耳に届いていなかったのかもしれない。
救世主としてこの先、もっとしびれる場面での登板が待っているはずだ。ワールドシリーズ2連覇に導く日本人の偉業を見てみたい。(史)













