自民党総裁選後の両院議員総会で壇上に並ぶ、高市早苗新総裁(右)と石破茂首相∥4日午後、東京・永田町の党本部
自民党総裁選後の両院議員総会で壇上に並ぶ、高市早苗新総裁(右)と石破茂首相∥4日午後、東京・永田町の党本部

 拍手の大きさがその後の結果を物語った。1週間前に投開票された自民党総裁選。決選投票に残った2人の演説を東京・永田町の党本部で聞いた。勝利した高市早苗新総裁の方が政策実現に向けた本気度が伝わってきた。会場にいた国会議員もそうだったのだろう。演説後の拍手は、まばらだった小泉進次郎農相と比べ歴然としていた。総裁選を通じて論戦が低調だった中、変化の兆しを感じた一瞬でもあった。

 思い返せば、1年前の総裁選も決選投票前のスピーチが決め手の一つだった。制限時間を超えても訴え続け、話をまとめきれなかった高市氏と比べ、石破茂首相は物言う姿勢など自身の立ち振る舞いへの「おわび」に言及し、議員の心をつかんだ。

 首相と高市氏は政治信条は違えど、自らの言葉で訴えかける演説や政策通という共通点がある。仲間を増やすのが課題というのも同じ。世論人気を背景に党員・党友票で圧倒し、議員心理を動かす総裁選の戦略も似る。

 ただ、総裁就任直後のハードルは高市氏の方が高いかもしれない。公明党との連立政権に向けた協議が決裂。総裁選で約束した経済対策を実行に移す道筋は見えない。

 首相は総裁選期間中に否定した早期の解散・総選挙に打って出てつまずき、言動の整合性が問われ続けた。高市氏はどうか。島根県の「竹島の日」式典に「閣僚が出席すべきだ」とした訴えは、果たして実現するのか。(吏)