絵本の選書などを手がけ、若年層や児童施設のニーズに応える小村優衣さん(左)と将史さん=出雲市平田町、小村書店
絵本の選書などを手がけ、若年層や児童施設のニーズに応える小村優衣さん(左)と将史さん=出雲市平田町、小村書店
企画を通して高品質で希少な品を展示・販売し利益の積み上げを図る西村史之さん=松江市南田町、アルトスブックストア
企画を通して高品質で希少な品を展示・販売し利益の積み上げを図る西村史之さん=松江市南田町、アルトスブックストア

          
絵本の選書などを手がけ、若年層や児童施設のニーズに応える小村優衣さん(左)と将史さん=出雲市平田町、小村書店

          
企画を通して高品質で希少な品を展示・販売し利益の積み上げを図る西村史之さん=松江市南田町、アルトスブックストア

 読書離れなどで全国的に書店が減少する中、個性的な経営で存続を図る小規模な店が島根県内にある。書籍とともにこだわりの小物や衣服などを販売したり、定額制で本を選書するサブスクリプションを手がけたりするなど、収益確保に努めながら「地域の読書文化」を守っている。(多賀芳文)

 全国出版協会(東京都)などによると、紙の出版物の売り上げは全国で約30年前より6割近く減り2022年は1兆1200億円。市場の縮小とともに山陰両県の書店も減少する。24年12月時点の店数は島根が71店、鳥取が58店で、10年前に比べ島根で26店、鳥取で14店がなくなった。背景にネットストアの普及やスマートフォンや交流サイト(SNS)の浸透による紙離れ、読書離れがある。

 こうした中、新たな手法で経営を続ける書店がある。アルトスブックストア(松江市南田町)は広さ10坪ほどの売り場で、衣食住を主なテーマに年20回を超すイベントを企画。店主・西村史之さん(58)がイベントと関連させて選んだ書籍や工芸品、アパレル商品を配置する。工芸品やアパレル商品は入手困難な珍しい物もあり、販売すれば書籍より利益率が高く安定収益につなげている。

 店は先代の父が経営した頃は病院などへの書籍販売で利益を上げていたが、コンビニエンスストアの台頭もあり売り上げが減少。西村さんは05年の店舗改修に併せセレクトショップ型書店として再出発した。本の魅力に「他の商材と組み合わせやすい懐の深さ」(西村さん)を挙げる。

 創業100年の老舗・小村書店(出雲市平田町)は「外で稼ぐ戦略」を試みる。後継者の小村将史さん(34)と優衣さん(34)夫婦は、ともに保育士だった経験を基に子育て世帯へアプローチ。定額の年間契約で年次に合わせた良書を届ける「選書サービス」を展開する。ファン獲得とともに、契約を結ぶ保育所に対しては適切な書籍を提案。多忙な職員の負担軽減にもなると好評だ。

 収益確保は容易ではないが、夫婦は「本好きな人のためにこの場所を残したい。私たちも好きだから」と口をそろえる。