冊子を手にする今岡実さん=出雲市荒茅町
冊子を手にする今岡実さん=出雲市荒茅町

 大社高校野球部監督として甲子園に春夏2度出場した今岡実さん(86)=出雲市荒茅町=が指導経験を冊子にまとめた。昨夏の全国選手権でベスト8に入り「大社旋風」を巻き起こした後輩の活躍に刺激を受け、島根県勢のさらなる活躍に一役買いたいと筆を執った。県内の指導者らに配りたいとしている。

 1981年から87年まで監督を務め、83年春の選抜で東北(宮城)など強豪を破り、ベスト8に導いた。本格的な競技経験はなく、教師になって野球を学び、奇策をいとわない独自の野球で存在感を示した。

 約180ページに及ぶ冊子ではコーチや監督としての経験を失敗談も含めて赤裸々につづった。就任当初はノックで外野まで打球が飛ばず「練習にならん」と生徒に言われ、県内外の指導者を訪ね、キャッチボールの指導方法を聞いた思い出を記述した。池田(徳島)の蔦文也監督や星稜(石川)の山下智茂監督ら当時の名将から送られた言葉も紹介している。

 勉強と経験を重ね「監督とは、選手が最も力が発揮しやすい状況に置いてやること」の結論を導いた。セオリーにこだわらず打者が迷いなくできる作戦を実行したり、シートノックで監督がわざとミスをし、選手が緊張なく試合に入れるようにしたりしたエピソードもユーモアを交えて伝える。

 人間教育の大切さも指摘し、数学教師や生徒指導での経験を詳述。夏の島根大会のメンバー選びの苦悩、ベンチに入れなかった部員と心を一つにしていった過程も記した。近年、少子化で部員数減少が課題になる中、10人のチームでいかに戦うかについても独自の考えを示している。

 冊子を印刷し、県内の各高校に配りたいと考えており「野球の技術は日々進化しているが、精神面などの根本は変わらない。冊子を通して考え方を伝え、島根県勢が甲子園で優勝する姿を見たい」と願っている。

(佐野卓矢)