春到来。学校や職場で新たな日々が始まる。新しい環境は、人の移動がもたらす。街や土地とは移ろう人々の「生」の軌跡で織りなされ、時々刻々と変化を遂げる織物(テクスト)とも言えるだろう。では、そこで営まれる「わたし」の「生」とは。島口大樹「ソロ・エコー」(「群像」5月号)は、この問いを巡って書かれている。

 固有の座標

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