地域商社の支援を手掛けるベンチャー企業「RCG」(東京)が中小企業の福利厚生向けに、地域金融機関が推薦した各地の食料品をカタログ販売するサービスを8月に始めた。企業が福利厚生として利用することで、従業員の満足度向上を図りながら、新型コロナウイルスの悪影響を受ける各地の生産者を地域間で支え合うのが狙いだ。

 RCGは、金融機関の目利きで厳選した産品のカタログ販売サービス「バンカーズチョイス」を6月下旬から個人向けにスタートさせた。

 今回の企業向け福利厚生サービスは、6月25日に開催された諏訪信用金庫(長野県)の総代会がきっかけとなった。

 諏訪信金ビジネスサポート部の奥山真司次長が総代会でサービスを紹介したところ後日、総代を務める中小企業経営者に電話で呼び出された。

 会社を訪れた奥山氏は「コロナ禍で苦しむ生産者、飲食店を応援する事業者間の相互扶助である」「地域金融機関だからこそ知っている地域の逸品を推薦した」とサービスの趣旨を説明した。

 すると、この経営者は「従業員の福利厚生費は予算化しているが、コロナ対策で納涼会は開けず、予算に余裕がある。全国で困っている事業者のためになるなら」と購入を快諾したという。

 他の経営者からも「商品券を渡すだけでは味気ない。コロナ禍だが食で各地を旅行した気分になれる心のこもった産品が欲しかった」「お盆休み前に直接、従業員に商品を手渡しして、労をねぎらいたい」などの声が寄せられた。

 奥山氏がRCGに中小企業の声を伝えたところ、企業版サービスの事業化が決まった。

 福利厚生サービスは、カタログから1品を選ぶ5400円と、2品選ぶ1万800円の2コース。RCGの天間幸生社長は「賞与に加算して支給すると課税されるが、従業員が商品を選び、厚生費で処理すれば課税されない。普段は手にしない食品も福利厚生で楽しんでほしい」と話す。

 RCGのカタログ販売事業には島根銀行など17の地域金融機関と団体、信用保証協会などが参加する。

 地方では人手不足が中小企業の深刻な問題だ。従業員の満足度は生産性にも影響する。企業の福利厚生の充実を支援することも地域金融機関の役割として期待される。(共同通信編集委員・橋本卓典)