島根県東部に止水産卵性小型サンショウウオの新種がいることが分かった。日本爬虫(はちゅう)両棲(りょうせい)類学会会員の岩田貴之さん(39)=安来市飯島町=ら4人の研究グループが見つけ、発表した。従来、県東部は鳥取県や広島県にもいる2種の生息地と考えられていた。固有種発見に、岩田さんは「全国に誇れる島根の自然を見直すきっかけになれば幸いだ」と喜ぶ。 (松本稔史)
新種「ヒュノビウス・クニビキ」は頭胴長は雄が平均59・8ミリ、雌は同58・2ミリで、国内の止水産卵性サンショウウオ属の中では比較的大型の部類に入る。新種の論文が国際誌「Animals」に審査受理されて最終版が7月27日に公開された。標準和名「イズモサンショウウオ」が9月の学会総会で議決される見通しという。
岩田さんはカスミサンショウウオ種群(旧カスミ)がイワミ、サンイン、ヒバなど9種に分類される以前から、松江市橋北部に生息する個体群が「鳥取県内に生息する旧カスミ(サンイン)とは違う」と着目。2018年から倉吉市在住の協力者、大分大や高知大の研究者と調査を始めた。
島根県東部のうち北東部はサンイン、南部はヒバの生息地とされる一方、一部地域が分布空白域とされていたため、県東部を中心に中国地方北部一帯の旧カスミの成体124個体の形態形質、幼生を含む148個体の遺伝子情報を調べた。
県東部に生息し、遺伝的にヒバに近い系統としてホシザキグリーン財団(出雲市)の研究者らが20年に公表した「イズモ系統」が、ヒバにない尾の下部の黄色い線を持つことなど、形態的にも異なることを発見。
サンイン、ヒバ、イワミのいずれとも遺伝子情報が異なる個体群が、松江市の大部分、出雲市、同市境付近の大田市のごく一部、雲南市北部、安来市の一部に生息していることを突き止めた。岩田さんは「先行研究では不明だったイワミやサンインとの分布境界をほぼ特定できた」と話す。
島根県内でのみ生息が確認されている小型サンショウウオはオキサンショウウオに次いで2種目で、日本産サンショウウオ科45種中、県内には全国一の10種が生息することになった。














