西村康稔経済再生担当相は17日、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだ場合、人々の行動制限がどう緩和されるのか、具体的なイメージを専門家にまとめてもらうと明らかにした。緊急事態宣言の対象地域を拡大する一方で政府が緩和を検討していることになり、一部の感染症の専門家からは苦言が出ている。
政府が緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の期限延長や対象地域追加を諮問するために17日に開いた基本的対処方針分科会で、西村氏が「ワクチン接種が進んだ後の社会経済活動の制限緩和の検討を専門家にお願いしている」と述べた。
2回の接種を終えた人の割合がどのくらいになれば飲食店で酒を飲めたり、店に長く滞在できたり、観客が大人数のコンサートに入場できたりするのかを示すとみられる。制限緩和は2回接種した証明や、陰性であることの証明を持っている人を対象にする方向だ。
西村氏はこれまでもたびたび制限緩和に言及してきた。「少し明るいことを示してもらうことで、(コロナ収束まで)国民に我慢しようと思ってもらえるのではないか」と狙いを説明している。
菅義偉首相は、制限緩和の具体的なイメージを「出口戦略」と表現する。7月30日の記者会見では「2回接種した人の割合や重症者用病床の利用率、地域の医療体制などに着目し分析した上で考えていく」と話した。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も乗り気だ。8月12日の会見で「どう社会経済活動が変化するか、解除できるか近日中に示したい」と語った。
しかし、ある感染症の専門家は「今はそれ(出口戦略)を言う時期ではない」と強調。感染力の強いデルタ株が猛威を振るう流行の第5波への対応に政府は全力を挙げるべきだとの認識を示す。
コロナに関する経済リポートを多く執筆しているニッセイ基礎研究所の村松容子准主任研究員も「出口戦略は感染が拡大していない時に公表するなどタイミングが重要」と政府に注文を付ける。