安来市広瀬町、月山富田城の城下町遺跡・富田川河床遺跡から出土し、戦国時代から江戸初期にかけて流通したとされる銀貨「切銀(きりぎん)」が市立歴史資料館(安来市広瀬町町帳)で展示されている。石見銀山(大田市)や伯州銀山(鳥取県日南町)産とみられる切銀から、当時の流通の実態を知ることができる。
島根県古代文化センターが1980~82年度の遺跡調査で出土した金属片を2023年に再調査したところ、小さく切って使った秤量(ひょうりょう)貨幣の切銀と判明した。
全部で4枚あり、1枚(重さ21グラム)は特有の成分である微量の元素・ビスマスを含み、外観から石見銀山産とみられる。2枚(重さ8グラムと49グラム)は伯州銀山産に特徴的な金がわずかに含まれていたという。残る1枚(重さ28グラム)の産地は不明。
4枚の切銀は24年10~12月に出雲市の県立古代出雲歴史博物館での企画展「山陰の戦乱 月山富田城の時代」で展示し、今回は里帰り展示となった。
安来市教育委員会文化財課の舟木聡専門官(54)は「16、17世紀に富田の城下町に大きなマーケットがあったことを裏付けるもので、商人による盛んな商業活動の様子を物語る。城下の繁栄に思いをはせてほしい」と話した。
9月29日まで。午前9時半~午後5時、毎週火曜日休館。入館料は一般210円、高校生・大学生100円、小中学生30円。(中山竜一)