たき火を使った調理風景
たき火を使った調理風景

 猛暑が和らぎ外出しやすい気温になってきたが、新型コロナウイルスの感染拡大で、人が密集する場所や遠方へは出かけづらい。そこで、身近な場所でアウトドアを楽しもうと、キャンプが人気を集めているようだ。キャンプと言えば真夏のイメージが強いが、気候が穏やかな晩夏から秋にかけて楽しむ人も多い。密集するグループで集まることがはばかられる中、最近じわじわと人気を集めるのが、一人で楽しむ「ソロキャンプ」。気にはなっているけど、なかなか始められない…という人も多いのではないだろうか。実は記者もその一人だ。ソロキャンプの魅力や楽しみ方を知るべく、オーシャンビューのキャンプ場があるマリンパーク多古鼻(松江市島根町多古)や、2020年4月にリニューアルされたキャンプ場・松江市宍道ふるさと森林公園(松江市宍道町佐々布)へ足を運んだ。(Sデジ編集部・宍道香穂)

キャンプの楽しみ方が多様化
 マリンパーク多古鼻のスタッフ、安部剛さん(55)は「以前は10人前後のグループでの来場が多かったが、コロナ禍は2~4人と少人数での来場が増えました。ソロキャンプ客もよく見かけます」と話す。
 「かつて(1990年代)のキャンプブームと比べ、スタイルが多様化していると感じます」と話すのは、宍道ふるさと森林公園副園長の太田涼さん(41)。豪華装備でキャンプを楽しむグランピングの登場、おしゃれなキャンプの様子を投稿するインスタグラマー、『ゆるキャン△』などキャンプを題材にした漫画・アニメをきっかけに、ソロキャンプやグランピングを楽しむ人が増えてきたそうだ。
 

松江市宍道ふるさと森林公園の太田涼副園長
マリンパーク多古鼻スタッフの安部さん

「一人」ならではの魅力
 ソロキャンプは、お笑い芸人のヒロシさんのYouTube動画が人気になるなど、以前と比べメジャーになったが「一人でキャンプなんて何が楽しいのか分からない…」という人もいるだろう。自身もたびたびソロキャンプをするという太田さんに、「一人」ならではの魅力を聞いてみると…?

 (太田さん)「やはり“自由さ”ではないでしょうか。人に合わせず、好きなように、思いついたことを思いついたときにできる。食べたいときに食べたいものを食べて、お酒が飲みたくなったら飲んで、眠くなったら寝る。とにかくやりたいようにやれるのが、ソロキャンプの魅力です」。

 なるほど、説得力がある。仲間とにぎやかに過ごすキャンプももちろん楽しいが、一人だからこそできる楽しみ方がある。友人でも家族でも、相手がいるとどうしても、自由気ままに過ごすのははばかられるし、気も遣う。完全に好き勝手に過ごせるのは、ソロキャンプならではの魅力、面白さなのだろう。

どうやって過ごすの?
 具体的な過ごし方はどうか。安部さんに尋ねると「何をするでもなく、たき火を眺めている人が多いです。読書をしているのもよく見かけます。タープ(日よけ)を張って、とことん本に集中、という感じで」とのこと。
 日常の喧騒を離れ、自然の中で読書に没入する。ぜいたくな時間の使い方で、まさに「ソロ」だからこそできること。一見退屈そうだが「たき火を眺める」も根強い人気だ。「同一ではない、予測できない自然のリズムで炎が揺らめいているのが魅力です」と太田さん。動画投稿サイトでも、たき火の映像が流れるだけの動画は人気で、キャンプでたき火を眺める人が多いのもうなずける。

たき火の様子(以下、写真はすべて太田さん提供)

お薦めのキャンプ飯は?

いつもと同じメニューも、屋外で調理することで新鮮に感じられそう。


 キャンプの醍醐味のひとつが料理。太田さんに、お薦めの「キャンプ飯」を教えてもらった。流行りの「ダッチオーブン」(ふたの上に炭を置き、中身を加熱することができる鍋)を使えば、焼く、煮る、炒める、蒸す、あらゆる調理ができるという。「パパッと作りたいときは、袋入りのカット野菜を水で煮込み、コンソメなどで味をつければスープの完成です。気力があれば、トマトなど水分の多い野菜を使い、“無水スープ”を作ります。野菜を大きめに切ると、ゴロゴロ感が楽しめます。煮込んでいる間は本を読むなど、のんびり過ごします」。ワイルドに調理できて、さらに美味しいキャンプ飯。空腹も気持ちも満たされそう。

 朝食にはホットサンド。持ち運び式のホットサンドメーカーとコンロがあれば、手軽に楽しめる。太田さんが「一時期ものすごくはまっていた」組み合わせは、キャベツの千切り、ベーコン、チーズ、バターを挟んだホットサンドとのこと。聞いているだけでおなかが空いてくる。

ベーコンのホットサンド
袋麺をアレンジ。目玉焼きとウインナーをトッピング。

 

気を付けたいマナー
 楽しいキャンプだが、トラブルに遭遇することもある。具体的に気を付けるべきポイントを聞いた。

 「最も多いのは、マナー関連の問題です」と太田さん。たき火の火の粉が隣のキャンパーの服に飛んで穴を開けてしまったり、出しっぱなしのごみをカラスなど動物に荒らされてしまったり…。夜は騒音もトラブルの元になる。宍道ふるさと森林公園は午後9時以降を「サイレントタイム」とし、騒音トラブルを防止している。

 また、たき火に関しては、直火(地面に直接まきを置いてたき火をすること)を許可しているキャンプ場と禁止しているキャンプ場とがあり、注意が必要。ほとんどのキャンプ場は、芝生の保護や火災防止のために直火を禁止しているという。たき火をする場合はたき火台を持参しよう。

何をそろえれば?服装、道具…

キャンプにはさまざまな道具が必要そうだが…?


 ソロキャンプの魅力やお薦めの過ごし方、注意すべき点が分かってきた。残る疑問は道具や服装。キャンプ初心者にとって大きな壁になる「何をそろえたら良いのか分からない」問題を解決したい。

 必需品は、テント、寝袋(夏は基本的にタオルケットでOK)、LEDランプなどの照明器具。必要に応じて調理器具、たき火台やコンロ、就寝時に敷くマット、いすやテーブル、タープ(日よけ用の布)を持っておくとよいとのこと。


 とはいえ、テント一つとっても多種多様な品があり、どれを選べばよいのか困ってしまいそうだ。そんなとき、お薦めなのがレンタルサービス。


 太田さん「最近はキャンプ道具を一式レンタルするサービスがあります。価格はピンキリですが、5千円ほどで一式レンタルできることも」。


 何度かキャンプをしていくうちに、形状や使い心地など、自分好みの道具が把握できるため、最初はレンタルを利用し、慣れてきたら好みのものを購入するというのもお薦め。

少しづつ、自分好みの道具をそろえていこう。

 服装については、動きやすく快適なものであれば良いとのことだが、いくつか注意点が。
太田さん「たき火をする場合、ナイロン製の服だと火の粉が飛んだ際に穴が開きやすく、お薦めしません。また、夏でも朝夕は冷えることがあるので1~2枚ほど余分に服を持って行くと安心です」。

 ナイロンなど化学繊維の服は火の粉が飛ぶと一瞬で溶けてしまうため、綿やウール製の服がお薦め。穴が開きにくい素材で作られた「たき火用ウエア」も多く販売されているそうだ。また、朝夕の冷え対策には、長袖Tシャツやパーカ、ブランケットを持参しよう。

いざキャンプへ!
 暑さも和らぎ、快適さが追求されるソロキャンプにはうってつけの季節。夏には少し暑苦しいたき火も、涼しい秋の夜なら心地良く感じられそう。いきなり泊まりがけのキャンプは不安…という人は、日帰りで楽しめる「デイキャンプ」から初めてみるのもお薦め。日中だけでも、一人のんびり自然の中で過ごすのは良いリフレッシュになるはず。記者も、コーヒーセットや本を片手に、まずは日帰りキャンプから挑戦してみたい。