島根とブータン王国との交流の歴史をまとめた「しまね・ブータン王国物語」を手にする柳楽正雄さん=出雲市日下町
島根とブータン王国との交流の歴史をまとめた「しまね・ブータン王国物語」を手にする柳楽正雄さん=出雲市日下町

 島根県ブータン友好協会事務局長の柳楽正雄さん(78)=出雲市日下町=が、島根とヒマラヤの秘境・ブータン王国との紙すきを通した交流の足跡を書籍「しまね・ブータン王国物語」にまとめた。ブータンへ6度訪れるなどして交流を支えてきた立場から、不思議な縁から島根と「幸せの国」が約35年紡いできた絆を網羅的に記した。 (園慎太郎)

 県職員時代、ブータン側に島根が誇る手すき和紙技術を伝える事業を担当した。1986年に県産業視察団の一員として渡航。質素で素朴な人柄で「古き良き日本」の面影を残すブータンの魅力にはまり、当時の三隅町や八雲村を中心に始まった交流に携わった。

 妻・紀美子さん(75)ら家族から交流の歴史を残すよう提案され執筆を決意。訪問時のメモや資料を掘り起こすとともに、自身がブータンで撮影してきた写真や年表を添え、6年かけ完成させた。

 著書では当時まだ国交のなかったブータンを訪れる際に航空券の確保などで悪戦苦闘し、飛行機が悪天候で激しく揺れインドへ戻った苦労話を紹介。来県したブータンの和紙技術研修員が心臓を患い、手術費を募るなど官民挙げ支援した心温まる逸話も盛り込んだ。

 一時途絶えていた浜田市との交流復活、教育を通し近年始まった海士町との交流の様子も紹介。心の充実を示す「国民総幸福量」を提唱するブータンの考えや衣食住の特徴のほか、農業や観光など多方面に及ぶ島根との関わりを丁寧な筆致で記した。

 柳楽さんは「多くの人に交流の概要を知ってもらい、友好親善の輪がさらに広がればうれしい。島根が小さくてもキラリと光るブータンのような存在になってほしい」と話す。

 本は四六判、264ページで1650円。ハーベスト出版から発行され、県内の主要書店などで購入できる。