金融機関の破綻に備える預金保険制度
金融機関の破綻に備える預金保険制度

 金融庁は23日、銀行や信用金庫の破綻時に預金を保護するため、金融機関が預金残高に一律の料率を掛けた額を毎年払う「預金保険制度」の改革を先送りする方針を固めた。再編などによる経営改善を促すため、財務の健全性が高い金融機関の料率を下げて、健全性が低い金融機関は上げる方向だったが、銀行などが新型コロナウイルス禍で打撃を受けた企業の支援を優先させる中、早期導入は困難と判断。当面は現行制度を維持する。

 預金保険は、金融機関が破綻した場合に預金者1人当たり元本1千万円までとその利息の合計金額を払い戻す制度。政府や日銀が出資する預金保険機構が業務を担い、銀行や信金が毎年支払う保険料を責任準備金として積み立てている。

 機構は7月30日、金融業界代表や有識者を集め、2022年度以降の料率の在り方を議論する検討会の初会合を非公開で開催した。検討会は年内に5回程度開き、来年1月に報告書を公表する。

 関係者によると、機構の出席者は初会合で、料率を変動させる案を検討課題として示さず、現行制度を当面維持することが固まった。金融庁は初会合に先立ち、この案を論点にしないことを機構と確認したという。

 責任準備金は22年3月末に、目標としていた5兆円を突破する見通し。10年9月の旧日本振興銀行を最後に金融機関の破綻はなく、資金不足に陥る可能性は低いため、機構や金融庁は当初、制度変更の好機とみていた。

 ただ、金融業界には「コロナ禍を受けた企業支援や低金利で経営が苦しい中、料率が上がれば保険料が利益を圧迫する」(地方銀行幹部)との警戒感も根強い。

 こうした背景もあり、金融庁幹部は「制度変更は慎重に検討する必要がある」として、経済情勢を見極めながら本格検討の時期を探る構えだ。