京都の老舗料亭の料理人らが、新型コロナウイルス対策の衛生認証基準を独自に作成した。業界団体のガイドラインを上回るルールや、国際基準に沿う100項目で「最高水準の厳しさ」との位置付け。第三者機関による認証の仕組みも設け、年内に府内100店舗での導入を目指す。感染が拡大する中、安心して来店してもらうのが狙い。
大正元(1912)年創業の「菊乃井」や、「木乃婦」(いずれも京都市)など16店舗のグループが企画。「座敷面積から許容人数の割り出し」「換気扇のサイズや客数に応じた換気量の算出」「窓を何センチ開けることが必要か」などで、「HACCP(ハサップ)」と呼ばれる食品衛生管理の国際基準に沿った70項目も盛り込んだ。
京都大ウイルス・再生医科学研究所などの助言を受け、感染リスクを科学的に検証した。食品衛生に精通する専門家らの認証機関が、現地調査したり定期的な記録提出を求めたりし「お墨付き」を与える。
グループが検討を始めたのは、感染拡大が顕著となった昨年4月。空間の衛生環境に関する具体的な指標がない中で「食文化のモデル都市を目指す」と検討を重ねた。
政府は今年4月、各都道府県に飲食店への認証制度の導入を求めた。京都府も約40項目からなる独自の認証制度を始めたが、「松尾温泉京料理鳥米」(京都市)の田中良典社長は、自治体が作ったものは多くの店舗が達成できる内容で、料理人らによる基準はそれよりはるかに厳しいと説明する。
京都は来月12日まで緊急事態宣言の対象となるなど業界には打撃が続く。田中さんは「不測の事態になってもこの基準を満たせば大丈夫という証明にし、他地域にも広げたい」と意義を語った。