人間の感情には喜怒哀楽がある。感情の強度でいえば、怒と喜であろうが、持続する深さでいえば、哀と楽といえよう。私には、とりわけ「哀」が、人間感情の基調をなしているように思われ、「哀」への傾斜はとりわけ日本人に顕著なのではないか、とも思う。それは、おそらく私が育ってきた時代と無関係ではなかろう。

 今年は戦後80年で、終戦後いくばくもせず生まれ...