新型コロナウイルス禍で外出自粛生活が長引く中、日光を浴びる時間が減って、骨の健康や免疫機能の維持に欠かせないビタミンDが不足しがちだ。感染症の予防・症状軽減の効果が期待されるビタミンDに関心が高まっている。医師ら専門家に、その働きや効果的な摂取方法を聞いた。
日本機能性医学研究所所長の斎藤糧三医師によると、ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収を促して骨を強くするという。「インフルエンザなどの感染症を予防する他、ぜんそくや花粉症などのアレルギー疾患を抑制する効果も近年明らかになってきました」と話す。
欧州などの研究で、ビタミンDの摂取がコロナ感染症の予防、重症化や死亡するリスクの軽減につながるとの報告も出され、因果関係については研究途上にあるが、予防効果が一層注目されているという。
ビタミンDは、皮膚が紫外線を浴びると合成され、日差しの強い5~8月の日光浴が効果的とされる。「しかし60歳以上の年代では合成する機能が低下し、長時間の日光浴が必要になるので、あまり有効とはいえません」(斎藤医師)
現代人は紫外線を避ける傾向が強く、日本人では女性で8割以上、男性で6割以上がビタミンD欠乏症とのデータもある。「自粛生活で日光浴の時間がさらに減り、ビタミンD欠乏症の人が増えている恐れもあります」
例えばサケやイワシ、しらす干し、きのこ類には、ビタミンDが比較的豊富に含まれるが、食事だけで十分な量を摂取するのは困難だという。「これらの食品を意識的に食べる習慣が望ましく、不足分はサプリメントで補うのが良いでしょう」
各種のサプリメントを製造、販売するファンケルによると、新型コロナ感染拡大後、サプリメント「ビタミンD」の2020年4~9月の売り上げは前年同期比で2倍以上に伸びた。担当者は「生活の大きな変化に伴い、ビタミンDの免疫への働きが注目されたと実感した」と話す。
同社では昨年夏、社員約110人の血中ビタミンD濃度を測定。充足している社員は6%だった。しかし昨年10月、全社員にサプリメント「ビタミンD」6カ月分を無料配布し、今年1月、同じ約110人の血中ビタミンD濃度を測定した結果、充足している社員が47%に増加したという。
担当者は「日光浴や食事からビタミンDが十分得られない場合は、サプリメントを活用してほしい」と話している。
斎藤医師は、ビタミンDが豊富に含まれた食事を継続して取る前提で、免疫機能の維持が期待できるサプリメントの1日当たり摂取量は「50マイクログラム(2000IU)が目安」とアドバイスする。