全国の児童相談所が2020年度に児童虐待として対応した件数が20万5029件(速報値)に上ったことが27日、厚生労働省のまとめで分かった。統計開始以来30年連続で最多を更新し、初めて20万件を超えた。前年度からの増加は1万1249件(5・8%増)。新型コロナウイルス禍の影響も懸念されるが、厚労省は「現時点で感染拡大との間に明確な関連性は見られない」とし、引き続き注視する方針。
厚労省は児相の体制強化を引き続き進める。近年の児童虐待対応件数の増加は、連携を強めた警察からの通告が増えたのが要因とみられ、今回もその傾向が続いた。専門家からは、コロナ禍で在宅時間が多くなるなど家庭環境が変化し虐待のリスクが上がる一方で、支援も届きにくくなり「虐待の潜在化」が起きているとの指摘もある。
厚労省によると、身体的、ネグレクト(育児放棄)、性的、心理的の虐待4類型のうち、最多は心理的虐待で12万1325件(前年度比1万2207件増)。次いで身体的虐待が5万33件(793件増)で、ネグレクトは減り3万1420件(1925件減)となった。性的虐待は2251件(174件増)。
通告の経路は、警察からが10万3619件(7146件増)と半数に上った。心理的虐待には、子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」が含まれ、警察からの通告が増えている。コロナ感染拡大で在宅時間が多くなった影響などで、DVの20年度の相談件数は約19万件(速報値)と前年度比1・6倍に急増したことが内閣府の統計で判明している。
今回の統計の都道府県別では、東京が2万5736件(4077件増)で最も多かった。近年最多だった大阪府は2万4633件(10件減)で2番目となった。山陰は、島根県が364件(31件減)、鳥取県が109件(1件減)だった。