尾崎放哉を題材にした小説「大空放哉」を手にする足立悦男さん=境港市新屋町
尾崎放哉を題材にした小説「大空放哉」を手にする足立悦男さん=境港市新屋町

 島根大名誉教授の足立悦男さん(74)=境港市新屋町=が、自由律俳句で知られる鳥取市出身の俳人・尾崎放哉(ほうさい)(1885~1926年)を題材に小説「大空(たいくう)放哉」を執筆した。架空の俳句雑誌の女性編集者が、放哉ゆかりの人を訪ね歩き、故人の人物像に迫る物語。放哉の句や書簡も随所に織り込み、季語や五・七・五に縛られない自由律俳句の奥深さも伝える。(園慎太郎)

 足立さんは島根大で教育学部教授(国語教育)、副学長を歴任したほか、放送大学島根学習センター所長などを務めた。老後の夢に小説執筆があり、故郷に背を向け各地を流転し俳句に打ち込んだ放哉に着目。放哉の晩年に焦点を当てた「みなんごあんの春」を2018年に著しており、今作で2作目となる。

 俳句雑誌の編集者・立原夕子が放哉没後、姉・並や妻・馨、香川県・小豆島の南郷庵で最期をみとった南堀シゲ、師と仰いだ荻原井泉水など放哉を支えた7人を訪ね歩くストーリー。夕子の取材を通し「咳(せき)をしても一人」など味わい深い句を送り出した放哉の魅力、家族や友人、同人らとのつながりを浮かび上がらせる。

 特徴は、足立さんが放哉の句集「大空」や書簡集を読み込み、句や書簡を丁寧にちりばめた上質な研究書である点。従来の研究で取り上げられなかったシゲら女性4人に光を当て、放哉の人間性をより多面的に伝えた点も特筆される。

 足立さんは「インタビュー小説であり書簡集、句集でもある。孤独な人生を送ったと思われる放哉が豊かな人とつながっていたことが分かると思う」と話す。

 四六判、190ページで千円。今井出版から発行され、山陰両県の主要書店で扱っている。