運転手の呼気から規定値を超えるアルコールを検出すると、車のエンジンがかからなくなる装置「アルコール・インターロック」に注目が集まっている。欧米で普及が先行し、国内でも導入する企業が出ている。千葉県八街市で児童が飲酒運転の大型トラックにはねられ死傷した事故を受け、普及に向けた国の検討も活発となっている。
国土交通省によると、海外では飲酒運転の違反者にアルコール・インターロックの設置を義務付ける国や、免許停止になった違反者に装置付きの車に限り運転を認める国があり、米国や英国、カナダ、フィンランドなどが、こうした制度を運用中。同省担当者は「全車両への設置義務付けはハードルが高いが、違反者への導入は現実的な選択肢。海外事例を参考に国内の普及に向けた検討を進める」としている。
福岡市の運送会社「福岡倉庫」は2014年、トラックに導入した。きっかけは協力会社の運転手が業務中に飲酒した不祥事。同社の北島龍也取締役陸運部長は「一度でも飲酒事故を起こせば信頼が一気に崩れる。そうなれば真面目に乗務する社員の生活も守れなくなる」と話す。
エンジンをかけるには毎回1~2分必要で、社員には当初戸惑いもあったが「使い続けるうちに、これが当たり前という感覚が浸透していった」(北島氏)。現在は福岡事業所で使用する全てのトラックに搭載。飲酒運転を絶対しないという強いアピールになり、顧客の信頼獲得にもつながっているという。
静岡県富士市の「東海電子」は09年にアルコール・インターロックの販売を始めた。1台15万円程度で、これまで約2700台を販売。顧客の大半は運送会社だが、アルコール依存症の家族のために購入する客も。八街市の事故後は問い合わせが増えているという。
販売中の機器では、エンジン始動後の飲酒や、運転手以外が呼気を吹き込む「替え玉」検査といった抜け道を防ぐため、運転席の様子を撮影するカメラ機能を備えたものもある。杉本哲也社長は「飲酒運転はゼロにできると信じている。情報発信や機器の改良などメーカーの立場でやれることを続ける」と語った。
千葉県警のある幹部は「厳罰化や取り締まりだけでは違反をなくせない現状が悔しい。飲酒運転撲滅をスローガンで終わらせないためにも、確実に効果の出る機器が広まってほしい」と話している。
▼八街市の児童死傷事故 千葉県八街市の市道で6月28日午後3時25分ごろ、下校中の小学生の列に大型トラックが突っ込み、男児2人が死亡、女児1人が重体となり男児2人が重傷を負った。運転手の呼気からは基準値を超えるアルコールが検出され、千葉地検は飲酒による居眠りの事故だったとして、運転手を自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)罪で起訴した。県警は事故を受け、現場の市道で時速30キロの速度規制を導入した。