自民党総裁選の立候補者討論会に臨む(左から)小林元経済安保相、茂木前幹事長、林官房長官、高市前経済安保相、小泉農相=24日、東京・内幸町の日本記者クラブ
自民党総裁選の立候補者討論会に臨む(左から)小林元経済安保相、茂木前幹事長、林官房長官、高市前経済安保相、小泉農相=24日、東京・内幸町の日本記者クラブ

 1年前のきょうは自民党総裁選の投開票日だった。苦杯をなめ続けた石破茂氏が5度目の挑戦で勝利し、悲願を果たした。東京・永田町の党本部でスポットライトを浴び、手を上げる姿に「政治が変わるかもしれない」と期待を抱いた。

 あれから1年、再び総裁選を追っている。24日にあった日本記者クラブ主催の討論会。総裁選レースの軸となる高市早苗前経済安全保障担当相、小泉進次郎農相は安全運転が目立った。少数与党下で党内外に配慮が必要とはいえ、靖国神社の参拝や選択的夫婦別姓制度導入など持論を語らず「らしさ」は薄れた。

 終了後、なじみの記者がこうつぶやいた。「1年前の方が面白かった」。同感だった。石破首相が総裁選の主張を翻して早期に解散総選挙を行い、発言の整合性を問われたことも影響しているのか。慎重な物言いでは、政治が変わる期待は感じ取れない。

 「たとえ党内で異論があっても国民に呼びかけながら信念を通すのが『らしさ』ではないか」。討論会ではこんな厳しい質問も飛んだ。国民の声を聞く力を重視する候補が多い中、自らの考えを伝えて納得と共感を得る努力が求められる。

 首相は退陣表明会見で「融和に誠心誠意努めてきたことが、結果として『らしさ』を失うことになった。どうしたらよかったのかな」と吐露した。教訓は生かされるのか。各候補が信念を持ってやり遂げる政策を聞きたい。(吏)