荒木飛呂彦さん作の人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の連載が1986年に週刊少年ジャンプで始まった時は衝撃を受けた。主人公のジョジョが英国貴族で、生活苦と無縁だったからだ。
『あしたのジョー』『ドカベン』など過去に感動した少年漫画の主人公は貧しく、貧困に負けぬ姿にも引かれた。対して境遇に恵まれ甘えん坊だったジョジョは、貧民街から来た凶悪な敵との対決を通じ立派な紳士になる。人物の魅力に貧富や貴賤(きせん)は関係ないと教わった。
ジョジョ以降は、少年漫画で貧困が表現される場面を目にしなくなったと思う。つぎはぎだらけの制服の中学生や貧しい人々が身を寄せ合う地域など。だが、貧困はなくなったのではなく、分かりにくくなっただけだ。
島根県の2024年度「子どもの生活に関する実態調査」では、世帯年収200万円以下、公共料金が払えないなどの生活困窮層は20・1%で、前回19年度調査より6・4ポイント増加。特に母子家庭の56・7%、父子家庭の31・3%が困窮層と、厳しい実態が明らかになった。
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』の放送がいよいよ29日に始まる。朝ドラでは貧困が扱われることも多く、明治期の松江を舞台にしたばけばけも、没落士族の娘が主人公とあって例外ではない。視聴者を励ます内容であってほしい、と願う。1983~84年放送の昭和の名作『おしん』がそうであったように。(板)













