対話型生成AI「チャットGPT」のアプリのアイコン(AP=共同)
対話型生成AI「チャットGPT」のアプリのアイコン(AP=共同)

 知人の助産師が「参った」というふうに話し始めた。相談に来た女性が、産後の心身共にきつい時期を人工知能(AI)に心情を打ち明け、AIから助言を得て乗り越えたという。産後太りに悩む別の女性は冷蔵庫内の食材を一つ一つAIに告げ、メニューを提示してもらい体重を落としたそうだ。

 とはいえ彼女たちもAIだけでは事足りず、生身の人間の下へも足を運んでいる。AIと人間とを組み合わせたハイブリッド型の導きで人生を進めるのが、今どきのベストな手法なのだろう。

 AI分野の開発は日進月歩。先日の小欄にもあったようにAIを制御に使うヒト型ロボットの開発は、米国や中国で加速している。細る働き手を補ってくれるが、人間の役割を奪われもするのが怖いところでもある。

 そんな話に思い出した。10年以上前に児童発達支援センターを訪れたときのこと。施設内を案内してもらっていると、5歳くらいの男児が笑顔で寄ってきて私の手を握り、並んで歩き出した。施設職員が「記者さんが優しい人だって分かったんですよ」と言ってくれたが、腑(ふ)に落ちなかった。諸事情あって内心はすさんでいたからだ。

 後日、はっと気付いた。恐らく男児は元気のない私を見抜き、励ましてくれたのだ。小さな手から伝わった優しさは今も心の支えになっている。こんな寄り添いや励ましはまだまだAIやヒト型ロボットはできない、はずだ。(衣)