昨夏の甲子園を沸かせた大社高の石飛文太監督が使ったのが「生徒の力は無限大」という言葉。大舞台で想像以上の力を発揮する選手の成長ぶりを言い表した名言だ。
その前年の甲子園では、仙台育英高(宮城)の須江航監督がこんな言葉を残していた。「人生は敗者復活戦。いつも負けてから始まる」。2年連続の全国制覇を懸けた決勝で慶応高(神奈川)に完敗。「この負けを敗者復活戦のエネルギーにして人生に臨んでほしい」と、最後の大会を終えた3年生に伝えたそうだ。
須江監督自身も“敗者”だった。埼玉から強豪・仙台育英に進んだものの厚い選手層に阻まれ、2年時にチームを支える「学生コーチ」に転身。挫折を糧に指導者への道を歩んだ。敗者の気持ちは誰より分かるはずだ。
きのう告示された自民党総裁選には5人が名乗りを上げた。いずれも1年前の総裁選で敗れており、立憲民主党の野田佳彦代表いわく「敗者復活戦みたいなもの」。とはいえ、現在の石破茂首相だって5度目の挑戦でようやくつかんだ総裁(首相)の座だった。挫折の経験を生かせたかは疑問だが。
勝ったからといって次期総裁は、少数与党下で首相になれる保証はない。仮になっても政権運営の苦労は無限大だろう。求められるのは石飛監督や須江監督のように選手のことを第一に考え、信頼されるリーダー像だ。できなければ、国民からすぐに見限られてしまう。(健)













