暮らしを守る―。新型コロナウイルス禍で収入が減り、困窮する人に対し、政府は生活費の貸付制度の拡充を柱とする支援策を打ち出してきた。しかし、仕組みや手続きの複雑さに、利用が低調とのデータも。支援団体関係者は「必要なのは、当事者が手を挙げなければいけない申請型ではなく、申請を待たず対象者に給付するプッシュ型の支援だ」と指摘する。
政府の支援策には主に、一時的な生活費を最大20万円まで貸し出す「緊急小口資金」と、失業して暮らしを立て直したい人などに最大60万円を3回まで貸す「総合支援資金」がある。もともと低所得世帯向けの制度だが、特例でコロナの影響で減収になった人にも対象を広げたり、上限額を引き上げたりした。いずれも市区町村の社会福祉協議会に申請が必要だ。
ひとり親支援に取り組むNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が昨年、母子家庭を対象に実施した調査では、緊急小口資金を知っていたのは69・7%、総合支援資金は48・6%。制度を知っていた人のうち、申請をした人は緊急小口資金で21・5%、総合支援基金で14・2%に限られた。申請しなかった理由は「どこで話を聞けばいいか分からない」「仕事で時間がない」「以前相談して嫌な思いをした」という声が目立った。
二つはあくまで貸し付けで、返済が求められる。収入減が続く住民税非課税世帯には返済免除の特例があるものの「借金になるのは不安だ」と申請しない人もいる。
支援策には他に、低所得のひとり親らに子ども1人当たり5万円を支給した給付金や、国民に一律10万円を支給した特別定額給付金といったプッシュ型もあった。感染拡大が収束する見通しはなく、これらの再支給を求める声が上がる。