全国知事会は30日、東京都内で会合を開き、飯泉嘉門会長(徳島県知事)の任期満了に伴い、新会長に平井伸治鳥取県知事(59)を正式に選んだ。平井知事は全国的な感染拡大が続く新型コロナウイルス対策を当面の課題とし「命を守り、感染の波を抑えなければならない。一致結束して乗り越えたい」と述べた。
会合後の記者会見で、コロナ対策について「感染者数を減らすことがスタートになるはずだが、国の政策はそれをスキップしている。現場の知事たちは焦燥感を持っている」と指摘。
外出を厳しく制限するロックダウン(都市封鎖)的な手法など、さらに踏み込んだ対策の必要性を重ねて強調し「日本医師会をはじめとした関係団体とのパイプをつなぎ直し、総力戦で立て直していくべきだ」と訴えた。
人口最少県からの選出となったことを踏まえ「コロナを乗り越える新しい地方創生、日本創造というテーマを掲げ、国の在り方や大都市と地方の関係、地方創生の手法を組み合わせて議論すべき時にきている」と大都市一極集中の是正にも意欲を示した。
過去最多となる40道府県知事からの推薦を受け、今月16日に無投票での会長選出が決まっていた。山陰両県の知事が就くのは初で、任期は9月3日から2年。
(白築昂)
「地方活性化へ支援」 首相、新旧会長と面会
菅義偉首相は30日、全国知事会長の飯泉嘉門徳島県知事と、後任会長に同日選出された平井伸治鳥取県知事と官邸で面会した。新型コロナウイルス感染収束後の自治体による地域活性化策について「全面的にバックアップする」と伝えた。面会後、両知事が記者団に明らかにした。
面会で平井氏は「さまざまな地域づくりを根付かせていかなければならない」と指摘。首相は、外国人観光客を取り戻す必要性に触れ「また元気な国をつくっていかなければいけない。地方が発展しなければ、この国は発展しない」と応じた。
国と対抗 結束示せるか
全国知事会長に選出された平井伸治鳥取県知事は、喫緊の課題である新型コロナウイルス感染収束に向けて地方側の先頭に立ち、後手に回りがちな政府を突き動かす積極的な役割が求められる。人口や財政力の格差拡大を背景に、都市と地方の足並みの乱れも指摘される中、国と対等に渡り合う知事会の結束力を高めていけるか。新会長の手腕が問われる。
コロナ対策を巡り、知事会は昨年からオンライン会合を頻繁に開いて政策提言をまとめ、国に実現を迫った。まん延防止等重点措置の創設など、提言の一部は政府の対策に直接反映され、地方側の存在感を高めた。
平井氏は、知事会のコロナ対策本部長代行として、これらの提言作成を一貫して主導してきた。会長選出に当たり、過去最多となる40人もの知事から推薦が集まったのは、平井氏への強い信頼の表れとも言える。
知事会はかつて、都市部に集中する税財源の偏在是正を巡り、都市と地方の対立を繰り返した。平井氏が知事を務める鳥取県は人口が全国最少。急速な人口減少や財政基盤の弱さなど、地方ならではの課題を熟知している一方、都市部の自治体が抱える事情や不満にも配慮した丁寧なかじ取りが求められる。
平井氏は30日の記者会見で「会長職は大都市中心で回っていたが、こうして人口最少県に白羽の矢が立ち、時代は変わったなと思う。40人の推薦状は、コロナ収束に向けみんなが一緒になって頑張ろうという意味。使命を果たすため誠実に向き合っていきたい」と述べた。