新型コロナウイルスのワクチン接種進展を前提に、緊急事態宣言の発令地域でも、十分な感染対策を取っていれば、飲食店の酒類提供を認めるとする政府の行動制限緩和案が3日、明らかになった。政府は10~11月に希望者全員への接種を終えたい意向で、この段階での緩和を想定しているとみられる。接種を終えた人の県境を越えた移動を容認し、観光支援事業「Go To トラベル」の再開も検討する。
政府は早ければ来週にも、社会経済活動の再開に向けたロードマップ(行程表)として公表する方針。ただ感染症の専門家には性急な緩和に慎重な意見もある。政府の新型コロナ感染症対策分科会は3日、行動制限について会合を開いて議論したが、ワクチン接種が進んでも制限緩和は段階的に状況に応じて進めるべきとの考えで一致。政府は感染状況なども見極めた上で最終判断する。
この日の分科会では、尾身茂会長がワクチンの接種証明と検査の陰性証明を組み合わせた「ワクチン・検査パッケージ」を提案。これを入院患者や高齢者施設入所者との面会のほか、県境をまたぐ出張や旅行、全国から人が集まる大規模イベントや部活動などに活用することを柱とした政府への提言をまとめた。
ただその場合もマスク着用などの対策を当面継続することが前提で、緊急事態宣言下での活用も想定していない。
またワクチン接種済みであることを公的に証明する「ワクチンパスポート」については、取得しない人が社会活動に参加できないことを想起させ、分断につながる懸念があるとして別の名称を使用することを提言した。
これに対し、政府の制限緩和案は「接種が進むと、基本的な感染防止策を前提にすれば、感染拡大を一定程度制御できるようになる」と指摘。緊急事態宣言地域でも飲食店の酒類提供を認め、営業時間の制限を緩和するとしているなど温度差がある。