保育所の全面休園数の推移
保育所の全面休園数の推移

 新型コロナウイルスの感染拡大で保育園の臨時休園が急増している。クラスター(感染者集団)の発生だけでなく、保健所の業務逼迫(ひっぱく)で濃厚接触者の調査が遅れ、休園期間が延びるケースも。子どもの預け先が見つからず、保護者が仕事を休まざるを得ない状況が続き、子育て世代に不安が広がる。

 「息子さんが濃厚接触者となりました」。8月下旬、首都圏在住の女性(32)は長男(4)の保育園からの連絡にため息をついた。「またか」。園で感染者が出て濃厚接触者とされたのは春に続き2回目。今回は園児ら10人以上が感染し、10日ほど休園した。

 濃厚接触者は50人以上に。長男はPCR検査で陰性だったものの、健康確認のため2週間の自宅待機となった。女性は共働きで、複数のベビーシッター業者に当たったが「濃厚接触者への対応はできない」と断られた。またいつ休園になるのか、安心して働けない日が続く。

 厚生労働省によると、感染者が出て全面休園している認可保育所などは2日時点で島根を含む15都道府県の185カ所に上り過去最多。7月1日の16カ所から約11倍に急増した。

 感染症に詳しい小児科医で慶応大の菅谷憲夫客員教授は、感染力が強いデルタ株の影響を指摘。「インフルエンザの4倍の感染力がある。抱っこなどの世話や子ども同士の遊びの中で密を避けるのは難しく、1人感染するとクラス全体に広がる恐れがある」と話す。

 東京都西部の保育園では8月中旬、園関係者が感染し一時休園に。保健所の疫学調査で「濃厚接触者はいない」と判断され、数日後に再開した。だがその日に別の関係者の感染が判明。再び休園したが、今度は保健所の調査が遅れ、再開までに時間がかかった。

 地元の自治体は8月、管轄する保育園の約4分の1に休園を要請した。いずれも陽性者が出たのに、保健所が繁忙ですぐに調査に入れないことが理由だった。保健所の担当者は「人手は簡単に増えない。優先順位を付け、何とかしのいでいる」と打ち明ける。

 度重なる休園に、保育園を利用する女性(39)は「在宅勤務をしながら、連日子どもの世話をするのは限界に近い。感染拡大が止まらない中、集団生活をする園に預ける不安もある」と漏らす。

 この自治体では、登園させず家庭で保育した場合、日数に応じて保育料を還付する制度を取り入れている。「自治体が協力要請することで、保護者が職場に休む理由を説明しやすくする狙いがある」と担当者。その上で「登園が必要な家庭にはきちんと提供する。保護者が選択できる仕組みが大事だ」と強調した。

 厚労省は、臨時休園する場合に保護者の負担を極力軽減する方法や、保育士による訪問保育など代替措置を検討するよう各自治体に求めている。だが、保育士や施設の不足で難しいのが実情だ。

 「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表は「非正規雇用やひとり親の場合、仕事を休めば生活ができなくなる。差し迫った家庭への保育の受け皿を用意すべきだ」と指摘。「全面休園ではなくクラスごとの判断や、濃厚接触者ではない保育士が少人数保育をするなどの対応が必要だ。保護者側の職場の理解も求められる」と話している。