新型コロナウイルス感染者の自宅療養が島根県内で始まった中、患者から電話で様子を聞き取ったり、実際に見に行ったりする看護師の拠点・訪問看護ステーションへのケアが喫緊の課題となっている。多忙を極める保健所の職員に代わる存在と期待されているものの、通常の訪問看護業務に加わるだけに、簡単に乗り出すことができないのが実情だ。人不足への対応もさることながら、資機材の配布もままならないような事態は避けなければならない。

 島根県は第5波での感染拡大に伴い、8月に軽症や無症状者が宿泊施設や自宅で療養するための調整を始めた。

 このうち自宅療養者は5日午前0時で49人。県は健康観察業務を主に県内各地の訪問看護ステーションに担ってもらう考えで、看護師が電話で健康状態などを聞き取り、保健所に結果を伝える。

 自宅療養開始を前に、県内92カ所の訪問看護ステーションに実施した県のアンケートでは、健康観察と24時間の電話対応ができると答えたのは28カ所、電話と訪問看護の両方が可能としたのは、10カ所にとどまった。

 県感染症対策室の田原研司室長は、主に保健所の職員が担う健康観察を「できるだけ早く訪問看護ステーションに依頼したい」としており、9月中の移行を目指す。

▼「電話対応が限界」

 だが、ことは簡単ではない。コロナ禍での訪問看護ステーションの現状は、病院の面会制限で、在宅看護の希望者が増える傾向にあるという。

 松江市内の訪問看護ステーションの代表者は「(感染者宅を)訪問するとなれば、他の利用者の感染リスク管理や、誰が行くかといった調整が難しい。電話で聞き取りをするのが限界という所が多いだろう」と推測する。

 コロナ対応は、感染の防護対策の必要がない電話対応一つとっても、通常とは違う要素を含んでいる。

 自宅から動けない療養者が抱える生活上の困りごとなど、聞き取りが長引くことも多い。毎日電話の相手が代われば療養者を不安にさせる恐れもある。

 120人の訪問看護を担う傍ら、自宅療養しているコロナ患者との電話対応を24時間体制で引き受けている浜田市のホットケアセンターでは、極力、担当者を固定してコミュケーションを取っている。

 山根優子社長は、1日2回、電話で熱の有無や酸素飽和度、食事を取れているかを入念に聞き取って観察表に記すほか、療養者からかかってくる電話に対応している。通常の利用者との混線を避けるため、専用回線を設けた。

 面識のない療養者を相手に電話で十分に聞き取りを行うには、日々の業務から患者の観察にたけた訪問看護師のスキルが欠かせないという。

 ただ他の事業所によっては、管理者が訪問看護師を兼ねて外出するケースも少なくない。山根社長は「より多くの事業所に関わってほしい」と話し、特定の事業所に負担が偏らないよう協力し合うのが望ましいとする。

▼患者見守る仕組み

 県は、療養者の自宅を訪問することも踏まえたマニュアル作成や、防護服の貸し出しなど、具体的な支援策を固めた上で、あらためて協力事業所の取りまとめをしている。

 県外では、自宅療養中に容態が急変しても入院できないケースが続出しており、患者サイドの不安は小さくない。患者にできるだけ安心してもらうためにも、訪問看護ステーションの拠点支援は急務だ。在宅患者を見守る仕組みづくりの重要性は、超高齢者社会を迎えるに当たって重要だと言われてきた。コロナがきっかけとはいえ、今支援に取り組むのは、けっして無駄にはならない。