映像ジャーナリストの伊藤詩織氏が12日、自身の初の長編ドキュメンタリー映画『Black Box Diaries』(本日公開)初日舞台あいさつに登壇。本作に込めた思いを明かした。
【写真】黒のジャケットスタイルで登場した伊藤詩織監督
冒頭のあいさつで、伊藤監督は「こんにちは、みなさん、映画いかがでしたか?」と観客に問いかけた後、「観ていていろんな気持ちだったり、自分に起きたことだったり、思い出したことがあると思いますので、一緒にBreathing sessionをできたらいいと思います。私もめちゃくちゃ緊張しているので。1、2、3吸って、吐いて」と深呼吸を呼びかけ、会場の空気を和ませた。
初日を迎え、「本当にこの映画を日本で公開できることを心よりうれしく思っています」とほほ笑んだ伊藤監督。「この映画は私にとって“日本へのラブレター”だと思って、10年間作ってまいりました」と込めた思いを明かし、「自分に起きた性暴力の被害から、本当にいろいろなことがありました。でもこうやって1人ではなく制作チームと一緒にいろんなことを乗り越えられたこと、そしてやっと、観ていても大変な気持ちになる映画だとは思うんですけど、皆さんにお届けできることを本当に心からうれしく思っています」と伝えた。
また「大前提として、このドキュメンタリー映画はジャーナリストとしては作っていないです」とし、「やっぱりジャーナリストとして、ある意味一線を超えて自分が主語になったストーリーテリングをしています」と明かした。「自分の生活なので監督なんてできず、ただそれを記録していくというところだったんですけど、編集はもう全く違う世界でした」とし、「ジャーナリストであったり、被害者の自分とバチバチに戦いながら、ほんとうに一つひとつ積み上げていった」と振り返った伊藤監督。
続けて「当事者としては入れたくないもの、やっと母が日曜日に見に来てくれるんですけど、やっぱり見せたくなかったシーンもあったりして、そういったところを、個人としてだったら言いたくないけど、監督としてだったらっていうふうに少しずつ、4年かかったんですけど、作り上げてきました」と語った。
本作は、伊藤氏自身が経験した性暴力事件を起点に、その後の社会の沈黙や偏見、そして、自身にのし掛かってきた圧力と向き合い続けた姿を、自らカメラを回して記録。製作には、『新聞記者』(2019年)、『月』(23年)など社会派作品で知られるスターサンズが参加。事件を公表した17年の記者会見以降、8年にわたる製作を経て完成した。
イギリス・アメリカとの国際共同製作として制作され、2024年1月の第41回サンダンス映画祭ワールドシネマ・ドキュメンタリー部門大審査員賞 に正式出品。その後、世界各国の映画祭や賞レースで高い評価を獲得し、第97回アカデミー賞で日本人監督初の長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。
舞台あいさつにはほかに、プロデューサーのエリック・ニアリ氏が登壇した。
オリコン関連記事













