一歩前進だが、インターネット取引の公平性、公正性を確保するにはまだ長い道のりが残っている。米アップルは日本の公正取引委員会の審査を受け、自社に有利になっていたアプリ開発業者への課金ルールを見直す。だが「GAFA」と呼ばれる米巨大IT企業のビジネス手法を改善するには、各国がさらに取り組みを強化する必要がある。

 巨大IT企業が、政府機関の要求に応じてルールを変更するのは世界初という。これまで有効策を探しあぐねてきた当局がようやくGAFAに対抗し得る力をつけ始めたと言えるだろう。これを突破口に、関連法制・制度を、最新のデジタル技術やビジネス手法に適応させ、国際協力を一層緊密にしたい。

 ネット企業の興隆によって私たちの生活は利便性が増し企業活動、行政サービスも効率化が進んだ。新型コロナウイルス禍での社会を考えてみても、リモート勤務や感染者追跡システムなどで多くをネット技術に依存している。今や、なくてはならない機能になったと言えるだろう。

 一方、市場の独占は「勝者総取り」になり、新興企業の芽を摘んでいる。データの収集、利活用にも個人情報保護の点から問題が浮上している。

 足元の問題解決に当たるのは当然だが、社会の維持・発展に不可欠であるネットサービスを提供する組織の適正な在り方について、少し時間軸を伸ばした長期的な観点から探る発想も重要になってくるだろう。

 GAFAを構成するのは、アップルにグーグル、フェイスブック、アマゾン・コムを加えた4社。デジタル広告、会員制交流サイト(SNS)、ネット通販といった分野でずばぬけたシェアを維持、次々と新規ビジネスを打ち出し、顧客を囲い込む。ただ米大統領選などでは、政治的な思惑がある偽情報やフェイクニュースを拡散させ、表現の自由を巡る国際的な議論に発展した。

 こうした中、欧州連合(EU)は個人データの管理を厳しく規制し、違反行為に巨額制裁金を課す一般データ保護規則を制定。米国では議会が事業分割を提言したり、司法省が独占禁止法違反でグーグルを提訴したりする動きが続いている。日本でも2月に巨大IT企業を規制する新法が施行された。

 アップルは今回、iPhone(アイフォーン)にアプリを提供する開発業者が利用者に料金を課す際のルールを見直す。売上高の最大30%をアップルから徴収される同社の決済システムしか認めていなかったが、業者が自社のウェブサイトに誘導して課金することを認め、アップルへの手数料は不要になる。

 アップルへの手数料負担がなくなればその分、コストが下がる。業者の経営状況にもよるが、利用料金の引き下げが実現すれば、消費者の利益につながる。ただ、これは書籍、音楽、動画といった項目に限られ、収入の主力とみられるゲームは対象になっていない。

 しかしゲームアプリの課金についても、米地裁が、アップルへの手数料が不要となる外部での処理を認めるよう命じる判決を出した。日本の独禁当局、米国の司法が事業の適正化を迫った形だ。判決が確定すれば事業モデルは大きな変容を迫られるだろう。今回の判決はグーグルなどにも大きな影響を与えそうだ。